8月19日 句会報告

 8月2回目の句会が行われました。今回の兼題は「向日葵」「夏服」でした。
今回は恩田侑布子の特選句が出ませんでしたが、「あと一歩で名句だったのに!」という句が目立ちました。イメージが沸きやすい兼題にも関わらず、個性豊かな世界観が広がっていたような気がします。
さて、まずは今回の高得点句から。


夏服や遠くに海を見るホーム
            佐藤宣雄

 
「すごく単純だけど、心惹かれる青春句に感じた」
「涼やかで悲哀に満ちて落ち着きがある」
「津波で町が流され、遠くにある海まで見渡せてしまう悲哀を感じた」という感想が出ました。
“ホーム”という言葉にそれぞれ違うイメージを持ったようです。
青春句と感じた方は「夏の制服を着た若者が電車のプラットホームから海を眺めている様子」を、
悲哀に満ちた句と感じた方は「老人ホームの窓から海を見ている老人の様子」を、
そして「東日本大震災の被災地をプラットホームから眺め、季節が巡っても光景が変わらない様子」を見たのです。

 恩田侑布子はこの読み手のイメージのばらつきは、やはり“ホーム”を曖昧に描写しているところに理由があると感想を述べました。
同じ音でも違う意味を持つ言葉には注意が必要ですね。

yuri
 
 
 さて、続いての句は添削してみるとより面白くなると話題になった句です。

アロハ着て夜の国ゆくピアノ弾き
            伊藤重之

 
恩田侑布子はとても個性的な世界観の句で、ひとところに収まらない、放浪のジャズピアニストをイメージできると鑑賞しました。しかし中七の「夜の国ゆく」というところがメルヘンチックになってしまい、損をしているように感じたようです。そこで、このような添削例を出しました。

(添削例)
アロハ着て千夜をゆけりピアノ弾き
アロハ着て千夜をゆくとピアノ弾き

 「千夜一夜」という言葉の持つ妖艶さが、夜から夜に渡り歩くピアニストの放浪の旅と結びつき、句の世界観をより一層高めるのではないか、というアドバイスでした。
作者は「千夜をゆけり」が気に入ったようです。

 次回の兼題は「秋の日」「きのこ」です。
すっかり秋の季語です!!この兼題では「秋日」「秋日和」「しいたけ」「タケノコ」などの食べ物としてのきのこでも、「キノコ狩り」のような使い方でもOKと、幅広く季語を探していいとのことですが…逆にとても頭を抱える二週間となりそうです。(山田とも恵)