10月21日 句会報告と特選句

 10月2回目の句会が行われました。今回の兼題は「花野」「運動会」でした。
「運動会」は昔、春の季語だったそうですが、現在は秋の季語です。しかし昨今熱中症対策などで春に運動会を行う学校も増えているので、あと数年したら春の季語に戻るかもしれない、ということが話題に上がりました。世相に影響される季語もあるのだと興味深く聞いていました。
 また今回より、怪我をされ休まれていた話題豊富な長老(!?)が元気に復帰され、どこか沈んだ雰囲気の句会に活気が戻りうれしい日となりました!

akinohatake

さて、今回の高得点句から。

 父は砲兵
 大陸の花野駆けたる足といふ
           山本正幸

「大陸→花野→足とズームインしていくようでおもしろい。」
「“花野”が“戦争”と対比されていて、より残酷さが際立つ」
「カラー映像としてあまり残っていない戦争はどこかフィクションのようだが、花野という言葉が入ると鮮やかになり途端に生々しく感じる」
という意見が出る一方、
恩田侑布子からは「戦争に絡む句は伝えたいことを明瞭にしないと、意図しない形で取られてしまう危険性がある。」と指摘がありました。
 恩田の指摘を受け、一同、句における戦争や時事問題の描き方を再考するいい機会となりました。
 
 また、今回は説明過多の句が多かったと恩田より講評ありました。
「説明過多」というのは「自分の中に伝えたいことがそんなにない」時に生まれやすく、反対に「伝えたいことがたくさんある」場合は削っていく作業なので、自然と説明を省いていくので過多にはなりにくいということです。

例)陽を留む金木犀のしたの夜  山田とも恵(10月21日句会より)

上記の例句では、「金木犀のしたの夜」が余分で、いらない説明。推敲の余地あり。

 次回の兼題は「小春日・大根」です。
いよいよ冬の季語の到来です。寒さに負けず、紅く染まる季節を楽しみたいと思います。(山田とも恵)

akinohana


特選 
  鈴虫を貰いし夜の不眠かな
              久保田利昭

 なにげなくもらった鈴虫だったのに、ただ風流な声を聴こうと思っただけなのに。寝室の窓際に置いた虫籠から澄み切った音色がきこえる。うすい羽をこすり合わせて出しているとは思えない。その声に思わず引き込まれてゆく。思い出さなくてもいいことまで、ついつい糸を手繰るように思い出されてキリがない。なんと、すっかり夜明け近くになってしまった。一匹の鈴虫がもたらした心理のドラマは、人生行路の凝縮そのもののようであった。非常に実感がこもる句で、不眠が感染してしまいそう。
         (選句・鑑賞 恩田侑布子)

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