1月6日 句会報告

平成31年1月6日 樸句会報【第63号】

新年第一回目の句会は、まだ松の内の6日に行われました。埼玉からも名古屋からも、遠距離をものともせず集う仲間がいてホットで楽しい初句会になりました。
兼題は「初景色」と「宝船」。
 
○入選1句、原石賞2句を紹介します。
 

20190106 句会報用
(「あらき」をご覧いただいている貴方様のご多幸をお祈りして)
                   photo by 侑布子

 
 
○入選
 宝船帆の遠のくなとほのくな
              石原あゆみ
 
 「夢の世界に入る様子、意識が遠のいていく感じが表現されていてよい」
 「明恵上人の“夢日記”を想いました」
 「遠のくなとほのくな、のリフレインが快い。ひらがなの眠気を誘うような言葉もいい」という感想がありました。
 
 「夜の夢の中で宝船が遠くに行ってしまうのを惜しんで遠のかないで欲しい、と言っている句。人間の欲を相対化している俳味があります。客観化したことで句柄が大きくなりました。夢の中の宝船を実感で書いているところもおもしろい。また、リズムがとても良い。駘蕩たるリズムですね。しかも、座五のリフレインをひらがなに開いたことで、意識が眠りに吸い込まれてゆくリアルな感じがします。景色も初凪のさざ波まで見えてくるようです」と恩田侑布子が評しました。
 

 
 
 今回の原石賞の二句は、季語や語順を変えるだけで格段に変わると恩田が評し添削しました。
 
 
【原】初化粧とは名ばかりの薄化粧
              樋口千鶴子
          ↓
【改】初鏡とは名ばかりの薄化粧
 
 「“化粧”を二つ重ねずに“初鏡”に変えると、楚々とした薄化粧の様子が表されて、ハッとするようなみずみずしい句になります。清潔な色気、美しさが出てくると思いませんか。散文的でなくなって、俳句という詩になります。千鶴子さんの飾らない本質が出たいい句ですね」とのことでした。
 
 
 
【原】大漁旗の群れ抜けて富士初景色
              見原万智子
          ↓
【改】初富士や大漁旗の群れを抜け
 
 「“富士”と“初景色”が重なっているのを解消すると見違えるような佳い句になります。カラフルな旗の奥に白雪の富士が見えてきます。情景が鮮やかになると思いませんか」と問いかけました。
 
 
 
 
 合評の後は、『俳壇』2019年1月号に掲載された恩田の「青女」30句(季 新年)を鑑賞しました。
 
 絶壁の寒晴どんと来いと云ふ
 
 よく枯れて小判の色になりゐたり
 
 淡交をあの世この世に年暮るる
 
        が多くの連衆に好まれました。
 
 
 
[後記]
 新年の句会。「いのちを喜び合うのが新年の句である」と聞きました。その時々の季を十分に受けとめ味わい日々を喜びの深いものにすることを俳句を通して実現できたら、と思った時間でした。

 次回兼題は、「水仙」と“寒”の付く季語です。(猪狩みき)
 
今回は、○入選1句、原石賞2句、△5句、ゝシルシ10句でした。
(句会での評価はきめこまやかな6段階 ◎ ◯ 原石 △ ゝ ・ です)

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