5月5日 句会報告

令和元年5月5日 樸句会報【第70号】

10連休のさなか、夏のような陽気の5月5日に句会がありました。
兼題は「袋掛」と「夏山」。

入選1句、△2句を紹介します。

20190505 句会報用 上
                     photo by 侑布子

 
○入選
 げんげ編めば編むほどひと日長くなる
               田村千春
 
恩田以外に採った人は男性が一人。
「かわいいなあという思いがわく。少女が野原で日が暮れるのを忘れるほど集中してげんげを編んでいる。時間の長さとひと日の長さのハーモニーが良い」と共感を述べました。
「観察者ではなく編んでいる人になりきって詠んでおり、ふしぎな詩の発見がある。”編めば編むほどひと日長くなる“と感じられるときがある。いまこのときが永遠のような気がする感覚。‟春日遅遅”の情が深くとらえられた。春の空気感がリアルで、リズムと内容が合っている。前半の「げ」「ば」「ど」の濁音が編み込まれてゆく湿ったげんげ束の質感をおもわせ、大変効果的」と恩田侑布子が評しました。
 
 
 
 △ 青重くとろり滴る山となる
               萩倉 誠
 
「一物仕立ての句。芭蕉の“黄金打延べたる句”ですね。一物仕立ては難しいのだが、成功すればうまい、平凡でない句になる。山の存在感が表現されている、感覚のいい句。‟青重く‟は、この句のよさでもあり悪さでもあるところ。‟青“と‟滴る山”で季重なりの気味があるからです。青を消す方向で考えてみると大化けしそう」と恩田が評しました。
 
 
 
 △ 薫風や四元号をかくる友
               前島裕子
 
恩田のみに採られた句でした。
「友がいい。父や母なら成り立たない。友はある意味、人生の伴走者なので、大正、昭和、平成、令和の四元号を駈ける実感がともなう。そこに句の力強さが生まれた。実際に即していえば、かなりお齢のはなれた友だろう。その老境の友への尊敬とエールが、こちらに反響してかえってくる。こころあたたまる句です」(恩田評)
 
 
 
(参考)芭蕉の“黄金打延べたる句”
先師曰く、発句は頭よりすらすらといひ下し来るを上品(じょうぼん)とす。先師酒堂に教えて曰く、発句は汝が如く、二つ三つ取り集めするものにあらず。金(こがね)を打延べたる如くなるべし、と也。(『去来抄』)
 
 
[後記]
季語をどう斡旋するか、季語の本意をわきまえて使うことの重要性も合評の中で話題になりました。季語を自分の中でどう実感のあるものにしていくかが大事だということをあらためて感じました。「題を出されてそれに合わせて句を作るだけでなく、自分の表現したいものをその時々の季語を選んで作句するという主体的な句作りも大事に大切に育てていってほしい」という恩田先生の言葉を心にとめておきたいと思います。
次回兼題は、「鰹」と「‟水“の文字を使った句」です。(猪狩みき)

今回は、入選1句、△3句、シルシ4句、・15句でした。
(句会での評価はきめこまやかな6段階 ◎ ◯ 原石 △ ゝ ・ です)

20190505 句会報用 下
                     photo by 侑布子

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