師走となりましたが、静岡は穏やかな気候が続いています。
今回の兼題は「水鳥」「冬夕焼」です。駿府城址を囲む外堀と中堀でも何種類かの水鳥が見られます。
高点句や話題句などを紹介します。恩田侑布子特選句はありませんでした。
鴛鴦の二つの水輪重なりぬ
佐藤宣雄
「いかにも仲の良い鴛鴦(おしどり)の様子が目に浮かぶ」
「素直に詠っているところに惹かれた」などの感想が聞かれました。
恩田は、
「情景を素直に詠っているが、既視感があり鮮度がない。ということは類想があるということ。最近の皆さんの句は「省略」がなくなってきている。同義語が並び、くどくなっている。万人の共感を得やすい句は類想が多い」と、掲句を題材に会員の投句について少し厳しく?講評しました。
見舞客去りての疲れ冬夕焼
西垣 譲
「私も入院した経験があり、見舞客が帰るとホッとする」と共感の声がありました。
恩田は、
「気持ちはよく分かるが、言いすぎの句。中七の「疲れ」という語で迷惑した気持ちが出た。「疲れ」で答を言ってしまっており、詩がない。むしろ、どんな見舞客だったかを具体的に述べたほうがいい」と講評し、次のように添削しました。
見舞客三人の去り冬夕焼
「『三人の去り』で十分疲れたのが分かる。余韻が深くなりませんか」と問いかけました。
冬夕焼トランペットの木陰から
藤田まゆみ
恩田侑布子原石賞
「冬の夕焼に音があるとすればトランペットの音か。音の広がりと夕焼の広がりが重なって感じられた」
「こんな情景、ニニ・ロッソの曲にありましたね」
などの感想。
恩田は、
「言おうとした景色が絶妙で、冬夕焼の美しさが伝わる。しかし、画面構成が縮んでいく句だ。風景を大きくしたい」と講評し、次のように添削しました。
木立よりトランペットや冬夕焼
「推敲は景が大きくなるようにしたい。小さい詩形なればこそ、大景を詠むのが大事だ」と解説しました。
弱虫を冬夕焼が抱きくれぬ
杉山雅子
「夕焼を見ると悲しさがついてくる。喧嘩したのか?ころんだのか?傍に母親がいる。親子の姿を夕焼が包みこんでいる」
「気が弱い男の子ではないか?夕焼が抱いてくれるというところに甘い悲しみがあるが、そこを俳句としていいと思うかどうかだ」などの感想、意見。
恩田は、
「『抱きくれぬ』で甘さが出て、句柄を小さくしてしまったのではないか。もっと突き放したほうがいいと思う」と講評しました。
水鳥の果つるは水かはた空か
西垣 譲
恩田侑布子入選
「水鳥の終焉に思いを馳せた、単純化された用語が茫々とした水と空しかない光景をつくりだす。まさに浮寝鳥。答を読み手に委ねたところがいい」と講評しました。
[後記]
今回も談論風発、三時間があっという間に過ぎました。
句会で話題に上った正岡子規『獺祭書屋俳話・芭蕉雑談』(岩波文庫)を求めて、早速T書店に走った筆者でした。
次回の兼題は「師走(十二月)」「暖房」です。(山本正幸)