節分の句会。兼題は「当季雑詠(冬、新年)」です。
今回は恩田侑布子の特選、入選、原石賞のいずれもなくフチョーでした。
なかから△印の高点句を紹介します。
冴ゆる夜の監視カメラの視線かな
久保田利昭
「“冴ゆる夜”と監視カメラという機械の冷たさが一致している」
「冷たいキーンとした感じが出ている。カメラの無表情な視線がある。自然と人工の対比」
「監視カメラが意志をもって視ていることの気持ち悪さが表されている」
などの感想、意見が出ました。
恩田は、
「季語が効いている。“視“が重なってくどいようだが、こう言わないと句にならない。無機的なものが有機的なものに転化し、ぎょっとする瞬間をつかまえた。現代を詠んでいる。座五もよい」
と講評し、さらに、
「“花鳥諷詠”だけではなく、自然環境や社会環境など2017年の現代に生きていることを詠むのは大切。“複眼の思想”を持ちたい」
と述べました。
三センチ歩幅広げる古希の春
松井誠司
「“一歩”ではなく“三センチ”が現実的でいい。70歳を迎え、前向きに生きようとしている」
「共感します。街で女の子に追い抜かれたりするんでしょ」
「共感! 歩幅を広げて歩くのは体にいい。意識してやらないと」
「健康雑誌に載りそうな句。糸井重里さんのコピーみたい」
など共感の声が多く出ました。
恩田は、
「懐かしい、情の豊かな句。歩幅を広げて速歩きするのは老化防止にいいそうです。中七にやわらかい切れをつくりたい」
とし、次のように添削しました。
三センチ歩幅広げて古希の春
「“て”で切れが生じ、リズムもよくなりませんか。俳句は音楽性をもつ韻文であることをこころがけて」
とうながしました。
枯枝の先一寸の人類史
伊藤重之
「はかなさと危うさ。リズム感があり、言い切っているのがよい」
「よく分からないが、なんとなく捨て難い句。イメージを膨らめていったのだろう」
などの感想。
恩田は、
「裸木に生物進化の系統図を投映した句。人類は威張っているが、地球生命史の上では誕生して間がない。戦争と殺戮を繰り返している人類への批判もある。しかし、季感が薄い。進化の系統図そのままで飛躍がなく、知的操作の勝った句」
と講評しました。
[後記]
今回の投句がやや低調だったのは「正月疲れ」なのでしょうか。しかし、かえって口角沫を飛ばす議論が百出し、みんなホットになりました。
恩田の「今回は説明や報告の投句が多かったように思う。俳句は韻文。叙述してはいけない」との指摘にうなずきながら句会を後にしました。
次回の兼題は「紅梅」「若布」です。乞うご期待!(山本正幸)
楽しく拝見しています。恩田さんの「破魔矢抱くわが光陰の芯なれと」読んですっかりフアンになっています。朝日新聞の俳句時評も拝見しています。3月号のアップを期待しながら待っています。
俳句集も探しているのですが3冊一緒でないと配達してくれませんでのでなかなか難しいです。
あらき俳句会レポートを楽しみにしています。
水島さま
熱いコメントありがとうございます。
代表の恩田もコメントを読み、非常に励まされたようです。
「破魔矢抱く~」の句が掲載されている最新句集『夢洗ひ』は芸術選奨受賞したこともあり、
重版が決定し大型書店にも並ぶようです。また、お近くの書店でも取り寄せも可能だと思いますので、
問い合わせていただくのも良いかと思います。
句会報のアップ楽しみにしていただいているとのこと、編集員一同とても励みになります!
俳句を楽しむ者としてこのサイトを利用していただければ思いますので、これからもちょくちょく覗いていただければ幸いです。