News 5月10日13:30〜恩田侑布子講演会のお誘い!

20190510 静岡高校教育講演会

                 第40回 静岡高校教育講演会  静岡高校在校生を対象として歴史を重ねて参りました本講演会は、いままでは成人の聴講を保護者・同窓生に限っておりましたが、このたびの恩田侑布子講演は、初めて一般市民に無料公開されます!!  お誘い合わせの上、市民の皆様にお一人でも多くお聴きいただければ光栄に存じます。             恩田侑布子 日時  2019年5月10日(金)         13:30~15:30 会場  静岡市民文化会館 大ホール  (一般の方は、2階自由席へお越しください) 講師  恩田侑布子 俳人・文芸評論家    演題  「あなたの橋を架けよう」          要旨  高校時代に恩田が出会って感動した草田男と蛇笏の俳句をゆっくりと味読します。  次に、いまなぜ俳句が世界市民に愛されているのかを探り、俳句とは何かを考えます。  さらに「読み」という人間の営為がもつ可能性を俯瞰し、総合読解力を土台に一人ひとりが未来にできることへの挑戦を促します。  最後に、恩田の親しんできた原始仏教から、未来を担う若者たちへ、餞のことばを贈ります。  時間がゆるせば、俳句朗読パフォーマンスもお楽しみいただきます。

4月7日 句会報告と特選句

20190407 大杉栄

平成31年4月7日 樸句会報【第68号】  今回は花盛りの吟行句会でした。 午前中に各々が駿府城公園や浅間神社など市内中心地の緑ゆたかな場所で作句し、午後より「もくせい会館」(静岡県職員会館)の和室にて開催されました。新たに2名の仲間が加わり、県外からの参加者も含め総勢14名の連衆とともに、恩田が持参した甘い苺を食べながらの賑やかな句会となりました。 ◎特選1句、○入選2句を紹介します。      ◎特選      大杉栄の墓にて   刻まれし名前ひよろりと草若葉                 天野智美      大杉栄は大正時代のアナーキストで、関東大震災の混乱の中、軍部によって、妻の伊藤野枝と六つの甥とともに虐殺された。その墓が静岡の沓谷にある。  私はまだ墓参したことがないが、この句を読んで、大杉栄という無政府主義者の生き方が生 々しく立ち上がってくるのを感じた。一句は真ん中八音目の「名前」で切断される。ちょうど栄が三八歳という人生の真ん中で、拷問後に扼殺されたように。切れを挟んで、句の下半身は視線が地べたへ移る。雑草は踏まれても潰されてもなにくわぬ顔をして「ひよろりと」春の日差しに生え出てくる。墓石に刻まれた一個のアナーキストの名前と、痩せていてもなかなか根強い草若葉の生命力が対比される。それがアナーキズムという東西古代からの人類史を脈 々と流れている思想のリアルな息吹であることも体感させる。栄の生涯を悼みながら、人類史を展望し、現代の地球上の草の根の営みまで励ます。淡々として大きな句である。          (選 ・鑑賞   恩田侑布子)     ○入選  籾蒔くや抜け出しさうな子を背負ひ               芹沢雄太郎    合評では、「現在の事ではなく、人手が足りなくて、子どもを背負ってでもやらなければならない農作業をしていた昔の話ではないか」「言葉として残しておきたい情景である」「そもそも今回の吟行句ではないのではないか」などの感想がありました。  恩田侑布子は 「籾を蒔く光景は今ではなかなか見られなくなった。しかも子どもを負ぶいながらとは、ますます貴重な情景。“抜け出しさうな子”に、なんとも元気で健康そうな、自分で立ちたがっている一歳ぐらいの子の実感がある。三人のお子を育てながら芹沢さんの奥さんは籾蒔きをされるという。これは家族じゅうで力を合わせて創った俳句。だからはちきれんばかりの命に満ちている」 と評しました。                                   ○入選  古墳へと迫る春筍掘りにけり               芹沢雄太郎  恩田だけが採った句でした。 「静岡市の街なみの真ん中には、ぽこんぽこんとかわいいいくつかの山があって、市民の散策場になっている。この古墳も「きよみずさん」の愛称で親しまれている山頂のもの。山の下にすむ近所の人が、ハシリの筍を掘りに来た。それを“古墳へと迫る春筍”と捉えた眼が卓抜。古墳に、顔を出しかけた春筍が「こんにちは」とよびかけそうで、千数百年隔たった時間が睦みあうような錯覚を覚える。古墳時代と、現代と、ともに晴れやかな日永のなかに存在し合う、何ともふしぎな読み心地をもたらす俳句である」 と評しました。  ※「きよみずさん」は静岡市葵区にある「音羽山清水寺」(高野山真言宗)     恩田は、吟行のやり方は結社などによって様々だが、吟行には大きく3つの効果があると言いました。 ① 締切がある即吟の為、作者の作為が消えて無意識が句に現れる効果がある。 ② その土地の風物や歴史に触れた句が出来る。 ③ 句会の仲間との親睦が図れる。  また選句の時間に恩田が、 「選句は全人格を持って俳句に向き合い、個人の好き嫌いではなく、句の水準の高さで選んで下さい」 と話し、オープンマインドでいるために作句帖と別に愛誦句帖を持つことの重要性を説きました。 次回の兼題は「雉」「櫟の花」です。          (恩田侑布子・芹沢雄太郎) [後記]  筆者にとって初めての吟行句会でした。新たに加わった仲間より、樸の連衆の句に感銘を受けて入会したと聞き、その作者の方々は照れながらもとても嬉しそうな顔をされていました。素直に心を開いて、初心の頃に俳句で受けた感動をいつまでも忘れずにいたいものです。(芹沢雄太郎) 今回は、◎特選1句、○入選2句、△4句、ゝシルシ13句、でした。 (句会での評価はきめこまやかな6段階 ◎ ◯ 原石 △ ゝ ・ です)

3月31日 句会報告と特選句

20190331 花の世へ-1

平成31年3月31日 樸句会報【第67号】 駿府城址公園の花が四分咲きの弥生尽。静岡にはめずらしい春疾風に「自転車を漕いで来るのたーいへん」といいながら集まったら、ちょっとドラマチックな句会になりました。 兼題は「花」と‟色名‟を入れた句でした。 ◎特選1句、○入選2句、原石賞1句を紹介します。                         ◎特選    花の世へ公衆電話が鳴つてゐる                村松なつを    一読、凶々しい句です。「花の世へ」という大胆で巨視的な掴みにインパクトがあります。対比的に「公衆電話が鳴つてゐる」という小さな個人的な緊急事態の逼迫感は切実です。「悲鳴が上がつてゐる」と書かれるよりずっとナマナマしい存在感です。警察からの電話でしょうか。それとも消防署からの折返しなのか。いずれにしろ直面したくない非日常の事態が、血を噴くように、花の世と対置されています。事実だけを投げ出している口語調が効果的です。無表情の恐ろしさといっていいでしょう。わたしたちが安閑と過ごしているこの俗世間の日常の危うさ、脆さをけたたましくあぶり出しています。心ここに切なるものがあり、表現技法上も間然するところのない一句です。          (選 ・鑑賞   恩田侑布子)       ○入選  色抜きのジーンズ洗ふ花の昼                萩倉 誠    合評では、「‟色抜きのジーンズ‟と‟花の昼‟がとてもよく合っている」「色の組み合わせにさわやかさを感じる」「若さを感じる気持ちのいい句」などの感想がありました。  恩田侑布子は 「ブリーチアウトジーンズを、“色抜きのジーンズ”と言い換えただけで、見違えるような含蓄と含羞が生まれたことに驚かされます。いろはうたに始まって、色どり、色好み、色気、色欲などなど、“色”の一文字がひろげる連想はかぎりないものがあります。日本語に熏習されたそれこそいろつや(❜ ❜ ❜ ❜)でしょう。灰味がかったうすい水色のジーンズの向こうに、かがやかしい薄桃色の花の枝が見えて来ます」 と評しました。       ○入選  花予報線量数値一画面                猪狩みき    恩田だけが採った句でした。  「桜の開花情報と地域別の放射線量の数値が、同じ画面に並んでいます。福島県のテレビは、今も天気予報の時に放射線量の数値を知らせるのでしょう。極めて現代的な日常風景を情緒のつけ入る隙なく、すべて漢字で表現しています。除染水も汚染袋も累々と遺跡を築きつつある重苦しく、行き詰まった状況のそばで生活をしていかなければならない現実の重みがあります」 と評しました。       【原】茶色の斑浮きて安堵も白木蓮                天野智美    恩田は 「無傷のはくれんの清らかさ、美しさを謳う俳句はたくさんありますが、茶色の斑に安堵するはくれんの句は初めて見ました。着眼に詩があります。ただ、このままではリズムが悪いですし、“も”がネバリます。せっかくの作者の独自な感受性を活かしてみましょう」 と評し、次のように添削しました。   【改】安堵せりはくれんに斑の浮き立ちて       今回の兼題の例句として、恩田が以下の句を紹介しました。   <花>  火を仕舞ひ水を仕舞ひし夜の桜               山尾玉藻  古稀といふ発心のとき花あらし               野沢節子  さくらさくらわが不知火はひかり凪              石牟礼道子  西行忌花と死の文字相似たり               中嶋鬼谷  紙の桜黒人悲歌は地に沈む               西東三鬼  老眼や埃のごとく桜ちる               西東三鬼 <色を使った句>  赤き火事哄笑せしが今日黒し               西東三鬼  元日を白く寒しと昼寝たり               西東三鬼       合評の後は、現代詩で色をテーマとした作品として、石牟礼道子の『紅葉 』を読みました。さらに、石牟礼道子の研究家でもある岩岡中正氏(「阿蘇」主宰)の「心の種をのこすことの葉」という題のエッセイと近詠句を皆で味わいました。                 次回は、駿府城公園や浅間神社、谷津山など、市内中心地の緑ゆたかな場所で自由に俳句をつくる吟行句会です。静岡駅から徒歩十分の「もくせい会館」(静岡県職員会館)が句会場です。           (恩田侑布子・猪狩みき) [後記] 「花」と「色」という大きなお題の今回。それぞれの視点のおもしろさを感じることができた句会でした。「色」からイメージできることの大きさ、広さ、深みを表現に活かしていくようなことを意識して句を作りたいと思わされました。(猪狩みき) 今回は、◎特選1句、○入選2句、原石賞1句、△2句、ゝシルシ9句、でした。 (句会での評価はきめこまやかな6段階 ◎ ◯ 原石 △ ゝ ・ です) なお、3月8日の句会報は、特選、入選がなくお休みしました。

読売新聞夕刊 「たしなみ」に恩田侑布子のエッセーの連載が始まります!

20190402 たしなみ

2019年4月2日、第1回 たしなみ 「時の川をわたるマナー」が掲載されます。 火曜日夕刊に4週毎の1年間連載予定です。2回目はGWのため、5月7日です。 たしなみのない人間が、世の中のたしなみをどう見たり感じたりしているか、 ご高覧ご支援いただければ倖いに存じます。どうぞよろしくお願いいたします。                         恩田侑布子