令和元年11月27日 樸句会報【第81号】
街の木々も紅葉し始めた、11月2回目の句会でした。
兼題は「マスク」と「冬の蝶」です。
入選句と高点だった△一句を紹介します。
○入選
マスクとり団交の矢面にたつ
山本正幸
労使交渉の緊迫した場面である。マスクを外し、いよいよ本気で勤労者側の要求に立ち向かう。その瞬間の群像のどよめき、一挙にあつまる視線の熱さが、空間の迫力として迫って来る。「マスク」「団交」「矢面」の名詞を、「とり」「たつ」のひらがな表記の動詞がスピーディにつないで即物性を際立たせている。
(恩田侑布子)
今回の最高点句でした。
合評では、「ざらざらした場面、マスクをとって語らなければならない場面をうまく表現している」「香港のことを思い出した」「きりっとした表情が“マスクをとる”で見えてくる」「動詞‟たつ“での止めがいい」「分かりすぎて余白がない」などの感想、意見がありました。
(猪狩みき)
△ クロッキー冬蝶の影のみ拾ひ
田村千春
入選句に次ぐ高点句でした。
合評では、
「冬蝶のありようの本質を拾った句」「描いている瞬間の白黒の様子を拾ったのがよい」などの感想、意見がありました。
「調べも美しく上手い。“拾ひ”がいい。句の大きさや広がりはないが、繊細な良さがある」と恩田は評しました。
(猪狩みき)
投句の合評に入る前に、芭蕉の『野ざらし紀行』を読み進めました。
今回取り上げたのは次の二句。
梅白し昨日や鶴をぬすまれし
樫の木の花にかまはぬすがたかな
「京都の富豪で談林系の俳人であった三井秋風への挨拶句である。一句目は当時出たばかりの漢詩の和刻本の内容を踏まえたタイムリーな句であり、二句目は三井秋風の高潔さを称えた句。当時“主におもねった句である”という非難もあったが、そうではない。阿諛追従とはいえない。芭蕉は時流を読んだり、主を喜ばせる才能もあった。蒸留水のように純粋というわけではないが、俗の中にもまれたりしながらも本質を失わないのが芭蕉である。」と恩田が解説しました。
[後記]
久しぶりの句会参加でした。句を採らなかった理由を聞かれてしどろもどろに。何となく何かが引っかかる、その何かを言葉にしないと伝わらないのですが言葉にできないままでした。このあたりを言語化することが作句にも直接つながることなのだろうと思っています。(猪狩みき)
次回兼題は、「冬の月」と「鰤」です。
今回は、○入選1句、△4句、ゝシルシ5句、・9句でした。
(句会での評価はきめこまやかな6段階 ◎ ◯ 原石 △ ゝ ・ です)
初めて句会に参加させて戴け有意義でした。
思いがけず△が戴け吃驚仰天でした。
ビギナーズ・ラックにならないよう精進します。
8日の句会もよろしくお願いします。
急に寒くなりました。皆様、ご自愛下さい。