photo by 侑布子
2022年3月23日 樸句会特選句
富士山の臍まで白き彼岸かな
塩谷ひろの
静岡から仰ぐ富士山が臍まで雪化粧するのは、意外にも真冬ではなく春先。黒潮の暖気と日差しを浴びる太平洋側の姿を明快にとらえています。この句の良さは時候の季語「彼岸」がすっきりと効いていることです。どうしても当季語は生活の季語「彼岸会」と曖昧になりやすく、彼岸詣や彼岸の法会にまつわる情景を詠みやすいものです。そこから吹っ切れた富士山が早春の透きとおるような純白を見せています。しかもその底から、臍下丹田の清らかさと、あの世この世の接点としての霊峰の気韻までが感じられてくるのです。
(選 ・鑑賞 恩田侑布子)
(選 ・鑑賞 恩田侑布子)