2023年6月18日 樸句会特選句
待ち人にもはや貌無し誘蛾灯
見原万智子
誘蛾灯の下で、ずっと待った、待ち続けた。貴方を。見つめられたかった瞳も、奪いたかった唇も、あまりに思いすぎて、今はもう闇に溶けてしまった。あんなに愛しい顔がはっきりとは思い出せない。誘蛾灯におびき寄せられて一瞬で死ぬ羽虫のように、私も貴方を一瞬で電撃のように殺してしまいたい。愛が憎しみに裏返る間際の、狂おしい恋。エロスの痙攣。
(選 ・鑑賞 恩田侑布子)
(選 ・鑑賞 恩田侑布子)