1月26日 句会報告

2025年1月26日 樸句会報 【第148号】

1月2回目の句会は静岡市内での対面句会となりました。雪化粧の富士山を窓の端に置きながら、普段のZoom句会とは違う刺激に、鑑賞も議論も心なしかヒートアップしていました。聞くところによるとZoomと対面のコミュニケーションでは刺激を受ける脳の部位が異なるそうです。
兼題は「氷柱」「冬菫」です。特選1句、原石賞2句を紹介します。
 

白鳥の胸つつまむとうるし闇    恩田侑布子(写俳)

 

◎ 特選
 寒声や師匠口ぐせ「間は魔なり」
             岸裕之

特選句の恩田鑑賞はあらき歳時記「寒声」をご覧ください。

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【原石賞】空と吾が語らふさんぽ冬菫
              山本綾子

【恩田侑布子評・添削】

「ソラトアガ」または「ソラトワレガ」と訓ませるのでしょうか。内容にふさわしいリズムにするにはギクシャクした「ガ」を外して内容の繊細さを生かしましょう。一音の違いで雰囲気が一変し、冬青空がさあっとひろがります。

【添削例】空と吾の語らふさんぽ冬菫
 

【原石賞】なりゆきのままに一世や大つらら
              活洲みな子

【恩田侑布子評・添削】

ユニークな把握を買います。上半分はズボラっぽい生き方。ところが、つもり積もってというか、垂れしたたってというか、結果は「大つらら」になりました。変身ぶりに驚かされます。せっかく句の捻りに力があるので、ひらがなでやさしく流してしまわないで、漢字表記でキリッと納めればおおらかな作者の存在感が出て出色の句になります。

【添削例】なりゆきのままに一世や大氷柱
 

【後記】
句会のあとは懇親会。持ち寄りの紹興酒や世界一周旅行のお土産つき抽選会を楽しみながら、俳句談議に花を咲かせます。年齢も性別もバラバラで、芸能や流行の話は通じ得なくても俳句の話は延々としていられます。個人的なことですが、北斗賞受賞の祝賀会を兼ねた場でもあり、「俳人の価値は現世の俳壇スター的活躍ではなく、どんな句集、どんな一句を遺せたかがすべて。死後読み返される俳人にならないと」との言葉に思わず背筋が伸びました。マンネリズムや自己模倣に陥らないよう、新しさとシビアさをもって今の時代を書いていきたいです。

 (古田秀)

(句会での評価はきめこまやかな6段階 ◎ ◯ 原石 △ ゝ ・ です)

金平糖角の頂冬うらら    恩田侑布子(写俳)

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1月12日 樸俳句会
兼題は食積、初詣でした。
特選1句、入選2句、原石賞1句を紹介します。

◎ 特選
 ほそき手の床より賀状たのまるる
             長倉尚世

特選句の恩田鑑賞はあらき歳時記「賀状」をご覧ください。

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○ 入選
 床の間に祖母てづくりの手毬かな
               前島裕子

【恩田侑布子評】

彩とりどりの絹糸で手毬をつくられるとは、誠実に生きて年を重ねられた祖母の端正な佇まいを彷彿とさせます。そのおばあちゃんの丹精こめた手毬を家のいちばん大事な床の間に飾る家族じゅうの敬愛の情。品格あふれる新年詠です。
 

○ 入選
 紅白なます太箸の棹さすごとし
                古田秀

【恩田侑布子評】

紅白膾を豊かな海波に見立てた意外性。しかも新年の、柳箸とも祝箸ともいう「太箸」を「棹さすごとし」とみた大胆な直喩の面白さ。蛋白質主体のご馳走責めの中で、大根とにんじんを細く切った清らかな酢の物はさっぱりとして、箸が進みます。気持ちの良い食欲と相まって健やかな新年詠です。上五の字余り七音と中七の句またがりにクセがありますが、それも作者のいい意味の個性が出たおおらかさでしょう。
 

【原石賞】三方は杉の香潔く鏡餅
              林彰

【恩田侑布子評・添削】

杉の香りは檜の香りとまた一段違います。上質な杉の白太でできた古式ゆかしい三方でしょう。ただ、潔いは、美しい、淋しい、悲しいと同じく、感想を「謂い応せ」てしまった感があります。また「潔く」は形容詞の連用形で鏡餅を修飾してつながるので、中七に切れが欲しいです。修飾語ではなく動詞にすると歯切れも良く、格調も高くなります。

【添削例】杉の香のたつ三方や鏡餅
 

わが視野の外から外へ冬かもめ    恩田侑布子(写俳)

 

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