あらき歳時記 樟若葉

photo by 侑布子

2025年5月4日 樸句会特選句

 天上の母はすこやか樟若葉

 活洲みな子

 天に召された母が健やかなはずはありません。常識からの飛躍に、新鮮な詩が生まれました。樟大樹の柔らかな限りない葉光を見上げたとき、ありし日の元気な母の姿が蘇ったのです。季語に被さる「すこやか」のひらがな表記によって、健康な母の息遣いまで感じられる句になりました。作者の胸にすこやかに生き続ける母は、同時に祈りの姿でもあります。もしかしたら母は長病みの末に旅立ったのかもしれません。「樟若葉」のようなおおらかな心根の母親によって、一家も地域も日本もたしかなものになっていくのだと信じることができる俳句です。

(選・鑑賞 恩田侑布子)

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