
photo by 侑布子
2026年2月15日 樸俳句会特選句
春疾風ワゴンの古書の箔ひかる
古田秀
神田神保町でしょうか。高齢多死社会により、膨大な量の古書が吐き出される一方、SNSに即反応する若者は本に時間を費やしません。かつては垂涎の的だった思想や歴史全集も文学者の個人全集も、場所塞ぎとして嫌われ、刊行時からは見る影もない値がついています。これは店舗入り口の書架からさらに外へ追いやられた二束三文の古本ワゴンです。「春疾風」に曝され、背文字の金の箔押しがひかります。豪華な装幀、誠実な幾人もの校正と編集、心血の注がれた香り高い文章の本が見捨てられています。狂躁しかない文化衰退期の無惨さ。フェイクの時代を「古書の箔」が告発します。
(選・鑑賞 恩田侑布子)