土の契り 二十一句

『俳句』2022年6月号に掲載された恩田侑布子「土の契り」21句をここに転載させていただきます。
 

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photo by 侑布子


 

      土の契り
  

  あをあをと水の惑星核の冬
 
  プーチンvs 星のはらから春凍る
 
  ウクライナ爆破菜の花放射状
   
  筍であれよ砲弾保育所に
 
  なあやめそ柳あをめる昼の月
 
  鬩ぎあふ四大プレート龍天に
 
  あきつしま卵膜ならんよなぐもり
 
  はにかみの国のまほらや春落葉

 

     伊豆産の早船、枯野からのあり。『古事記』

  大しだれざくら枯野の琴になれ
 
  ゆく春へ擬鳳蝶蛾あげはもどきの開張す
 
  腐葉土や踵よろこぶ若葉雨
  
  竹葉ちるあるいは空は金無垢か
 
  下へえしたへ大道無芸山百足
 
  まくなぎの変幻自在ポピュリズム
 
  うちよするするがのくにのはだかむし

   ※生きものに五虫あり。人間は裸虫。『礼記』
  

  滾つ瀬の音や万緑のぞき込む
 
  南冥へ波上げに行く瀑布かな
 
  三光鳥月日はづます星なれと
 
  早苗籠ひかる不老の谷ならん
 
  ひた向けば大鏡なり青はちす
 
  青人草そよぐ尺玉花火かな

 

 【初出】『俳句』二〇二二年六月号 特別作品二十一句
土の契り_候補3_IMG_4190

photo by 侑布子

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