
photo by 侑布子
2023年5月21日 樸句会特選句
卯波立つ廃炉作業の発電所
猪狩みき
メルトダウンを起こした福島原発である。太平洋から打ち寄せる卯波は、事故の前も後も変わらない。海原は無数の白い卯波を立てて夏の到来を告げる。が、陸に目を転じれば、一世代では解決できない廃炉作業が、未来永劫続いてゆく。歳時記では「卯波」の由来を、卯月の波、卯の花の咲く頃の波と説明するが、中国の『説文解字』では「卯」は門を開ける象形とされ、天門の意をもつ。万物が地を冒して出る、茂ることから、「顕現」の含意がある。掲出句は即物的な乾いた措辞が卯波の白さを引き立てる。季語の本意に、新たに、二十一世紀という時代の翳りを付け加え得た俳句である。
(選 ・鑑賞 恩田侑布子)
(選 ・鑑賞 恩田侑布子)