2024年1月27日 樸句会特選句
鯛焼のしつぽの温みほどの恋
小松浩
「はらわたほどの恋」ではなく、「しつぽの温みほどの恋」がなんとも可憐です。あるかないか。すぐに冷めてしまいそう。でも、ゆっくりと味わっていると、熱いホカホカのお腹のあんこからほわあんとした「温み」が伝わってきます。いまは「しっぽ」だけれど、これからいよいよ本丸のはらわたに攻め入るのかもしれません。そぞろにものを思わせる力のある、楽しく愛くるしい俳句です。 (選 ・鑑賞 恩田侑布子)
すごく良い句だと思います。
直感的に、「しっぽ」は「青春時代」だとわかりました。
男は、誰しも「青春時代の熱」をどこかに大切にしまっておくものです。奥様の誕生日に出された句なので、おそらく奥様へのラブレターとも受け取れますが、個人的であると同時に非常に普遍性があると思います。青春時代の恋が成就しようと成就しなかったであろうと、過去は切り離されたものでは決してありません。過去の感情は現在の中にも夕暮れの太陽の微熱として影響を与え続けています。必ず心に残る句となるでしょう。