一句鑑賞

『俳壇』2025年1月号 恩田侑布子「新春巻頭作品七句」より

本阿弥書店『俳壇』2025年1月号

 

鶏旦やガラスの天井るかゝと

恩田侑布子

 
 新年詠として爽快な一句だ。
 昭和の時代に仕事を始めた女性にとって、「ガラスの天井」という言葉は嫌というほど身近だ。平成、令和ときて、その言葉は未だ残っている。男女を問わず、人種、雇用、その他マイノリティと、将来に差別を感じている人のすそ野は広い。社会や組織のそんな圧力に臆することなく、自ら蹴破ってやるという気概。句末の「かゝと」にはっとする。

鶏旦やガラスの天井るかゝと

 元朝のことを、また鶏旦ともいう。中国由来の季語であろうが、元日の朝に響く鶏鳴の清々しさをも感じさせる。句を声に出してみると「鶏旦」「ガラス」「かゝと」と、重ねられたK音G音が力強い。初日を一身に浴びながら、あとに続く人のためにも理不尽な「ガラスの天井」に風穴をいざ開けん、と踏ん張る姿が浮かぶ。
 師に学んで六年目。俳人恩田侑布子は、やっぱり凛々しい。

活洲みな子(樸俳句会会員)

 

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photo by 侑布子

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