一句鑑賞 角川『俳句』2025年1月号 恩田侑布子「新年詠七句」より

角川『俳句』2025年1月号

 

ひらかれてあり初富士のまそかがみ

恩田侑布子

 
「あり」の強い断定と切れが、元旦の清涼感、潔ささえ感じさせ気持ちが良い。

 富士を見たいがため、極寒の朝大勢が山に登ってくる。
雲一つ無い富士を見る時、何とも形容し難い澄んだ気持ちになる。
まそかがみがひらかれてあると俳人は直観する。

諏訪大社の御神鏡は、「真澄」というらしい。
富士を拝する人々の「真澄」の心と富士の「まそかがみ」が照らし合いますように・・・、
という恩田侑布子の祈りがこの1句には込められている。

 「言葉は聖なるものの出来事である」・・ハイデガー
 「お前はそれを訊ねるのか。
  歌のなかにその精神はそよぐのだ、・・」・・ヘルダーリン

まるで、初富士そのものの如く美しいこの1句のそよぎにゆだねる。
そして、「出来事である」の意味がおぼろげに解るのだ。

益田隆久(樸俳句会会員)

 

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photo by 侑布子

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