ひらかれてあり初富士のまそかがみ
恩田侑布子
「あり」の強い断定と切れが、元旦の清涼感、潔ささえ感じさせ気持ちが良い。
富士を見たいがため、極寒の朝大勢が山に登ってくる。
雲一つ無い富士を見る時、何とも形容し難い澄んだ気持ちになる。
まそかがみがひらかれてあると俳人は直観する。
諏訪大社の御神鏡は、「真澄」というらしい。
富士を拝する人々の「真澄」の心と富士の「まそかがみ」が照らし合いますように・・・、
という恩田侑布子の祈りがこの1句には込められている。
「言葉は聖なるものの出来事である」・・ハイデガー
「お前はそれを訊ねるのか。
歌のなかにその精神はそよぐのだ、・・」・・ヘルダーリン
まるで、初富士そのものの如く美しいこの1句のそよぎにゆだねる。
そして、「出来事である」の意味がおぼろげに解るのだ。
益田隆久(樸俳句会会員)