5月1回目の句会が行われました。
今回の兼題は「春昼」「蝶」。
子供の日ということもあり、駿府城公園ではイベントが開催されとてもにぎわっていました。
それでは高得点句を中心にご紹介していきます。
◎ 特選 〇 入選 【原】 原石 △ 入選とシルシの中間 ゝ シルシ
〇春昼やビルの谷間の人形焼き
藤田まゆみ
合評では、
「都会の春昼のイメージ。映像が浮かんだ」
「ビルという現代的なものと、昔からある人形焼きというものの対比がいいなぁ」
「“ビルの谷間”というところに発見と感動がある」
と意見があがりました。
恩田侑布子は
「人形焼のいい匂い、そこに群がる観光客。浅草のこの賑わいがビルの谷間のことだと見定めたところがいい。大木あまりさんに〈春風や人形焼のへんな顔〉という、春風と一体化した名句がありましたが、まゆみさんの句もなかなか“春昼”が効いています」と講評しました。
〇二代目も顔剃り上手蝶の昼
山本正幸
合評では、
「薄い剃刀と蝶の翅のイメージが合っていて面白い」
「田舎の床屋さんののんびりした風景が思い浮かぶ」
など意見があがりました。
恩田侑布子は
「蝶の翅と刃を持ってくるところに感覚の鋭さを感じる。時の流れが“蝶の昼”の奥にある。先代に剃ってもらった感触を現在味わうことで、奥行きが生まれている。過去現在が合わせ鏡のようになっていて、そこを蝶が行ったり来たりしているよう。平凡な風景のように見えて、幻視のおもしろさもある。視覚聴覚は句にしやすいが、皮膚感覚を詠みこむ俳句は少ない 。」と講評しました。
【原】紙買ひにゆく裏道や春の昼
伊藤重之
今回の最高得点句でした。
合評では、
「“紙買ひにゆく裏道”とい表現が斬新」
「“紙買ひに”という言葉の軽やかさが、薄っぺらい紙をイメージさせ、それが春の昼とあっている」
という意見が出た一方、
「どんな紙か漠然としすぎている」、「“紙”が何かを読み手に託すのか?」、「“紙”と“春の昼”は合わない」というような意見も出ました。
恩田侑布子は
「“紙買ひに”というのが分かりづらい。“ka”音がキツイ印象を与え、コピー用紙を想像した。具体的なものを入れるとニュアンスが出て分かりやすくなる。」と講評し、「“春の昼”のやわらかい感じで詠むのなら…」と、次のように添削しました。
和紙購ひにゆく裏道や春の昼
「こうすることによって音韻が落ち着き、語呂も合いませんか?」
と解説しました。
[後記]
個人的なことですが、約二か月ぶりに参加した今回の句会。句会中、汗が滝のように流れたので「もう夏だなぁ」と思っていましたが、よく考えてみると諸先輩方の熱い議論に久しぶりに触れたからではないか?と思いいたりました。このままでは誰よりも先に干からびてしまう!樸の熱さにも夏の熱さにも負けないよう、頑張ります。次回の兼題は「夏近し・木蓮」 です。(山田とも恵)