恩田侑布子の角川『俳句』「偏愛俳人館2」は竹久夢二「淡雪の肌あい」です。 3月号は2月25日発売!
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恩田侑布子の新連載『俳句』「偏愛俳人館」に 嬉しいお便りをいただきました
恩田侑布子の連載『俳句』3月号「偏愛俳人館」の第二回竹久夢二に心のこもったお便りをいただきました。 月刊『俳句』3月号の、「淡雪の肌合い――竹久夢二」、拝読致しました。 今回も、新たな啓示を頂き、ありがとうございました。竹久夢二が俳句とかくも深い関わりがあったこと、驚きました。 特に最期の二句、 木枯や隣の室の鍵の音 魚になりて眠りさめには雪明り に胸を打たれます。恩田様の評論、 《輪廻転生をこれほど清らかに表象した例を知りません。その原初のたましいは男でも女でもなく水中の流体でした。だれも傷つけないやさしい一匹のいろくずだったのです》 一句から、人間存在の輪廻転生に及ぶここまでの深さと広がりのある鑑賞にしみじみと浸りました。私も魚になったようにしばしまどろんでいたい思いになりました。本当に名鑑賞です。また、次号の偏愛俳人館も楽しみにしています。 濱田さだこ 濱田さだこさま それこそ深いご感想をありがとうございます。 夢二の絵は少女時代から大好きで、雪のなかで手袋を外すロマンチックなハンカチなど、色褪せるまで使い古しました。 私自身、夢二がこんなに素晴らしい俳句を作っていたことは平成6年、夢二句集が出るまで何も存じませんでした。 濱田さだこさまのように、俳句でも夢二の理解者が増えてくだされば、著者冥利に尽きます。 夢二のこころのプリミティブな優しさを共感し合えて幸せです。ありがとうございます。 恩田侑布子 濱田様からは、『俳句』2月号「偏愛俳人館」の第一回飯田蛇笏にもこんな嬉しいお便りをいただいております。 『俳句』二月号の、偏愛俳人館を拝読しました。 蛇笏の俳句の凄さを再認識するとともに、生の円環運動、という言葉に集約する恩田氏の感性の深淵な広がりに感銘を受けました。 月刊俳句において、近来に無い面白い連載です。次号もとても期待し楽しみにしています。 濱田さだこ 濵田様ありがとうございました。 今後とも「偏愛俳人館」をご愛読いただき、ご批評等賜りたくよろしくお願い申し上げます。 恩田侑布子
「俳句」2月号から恩田の新連載「偏愛俳人館」が始まります。第一回は飯田蛇笏です。お楽しみください。
『俳句』『俳壇』1月号と『俳句あるふぁ』冬号に恩田侑布子の俳句が掲載されています。ご高覧頂ければ幸いです。
戸田書店カレンダーに樸の句が掲載されています
2020戸田書店オリジナルノートカレンダーに樸俳句会員の作品が掲載されています。(戸田書店さんは静岡市に本店があり、全国に30店舗以上展開しています。ノートカレンダーは本を買うと貰えます) ご高覧いただければ嬉しく存じます。 (選・恩田侑布子) 1月 初風に鵬のはばたき聞かんとす 恩田侑布子 スケートの靴紐きりりすでに鳥 松井誠司 2月 その人のうすき手のひら梅の径 山本正幸 3月 げんげ編めば編むほどひと日長くなる 田村千春 4月 花予報線量数値一画面 猪狩みき 5月 メーデーや白髪禿頭鬨の声 島田 淳 薫風や四元号を駈くる友 前島裕子 6月 梅雨めくや父の書棚に父を知る 石原あゆみ 金山やつるはし跡の青蛙 海野二美 7月 シニヨンは固し睡蓮閉ぢぬ間の 見原万智子 まづ風に流れ蜘蛛の囲作りたり 樋口千鶴子 8月 梨剥いて断捨離のこと墓のこと 伊藤重之 9月 爽籟やあなたの鼓動聞きわける 萩倉 誠 独り居の上手に炊けしきのこめし 戸田聰子 10月 馬鈴薯をふかしゲバラの日記読む 芹沢雄太郎 11月 柚子百顆草間彌生と混浴す 村松なつを 12月 石畳あてなく暮るる漱石忌 天野智美 あの頃のセーターさがす鬱金いろ 林 彰
◎ 第40回静岡高校教育講演会のアンケート、ありがとうございます
講演「あなたの橋を架けよう」に対して、もったいないほどの感想をあまたの高校生からお寄せいただきました。頼もしいみなさまと出会えて幸せです。深く感謝し、ほんの一部を紹介させていただきます。 これから80年余を生きてゆかれる若いみなさまの真摯な声に、力尽きるまで私もお応えしていきたいです。 こころ痛ましめることがあろうと、新たなステージへ転依(てんね)し、志を持して、大いなる前途を拓いてゆかれますよう、応援しています。 恩田侑布子 教育講演会についての生徒アンケートが寄せられました。その中の12人の方の感想を下記に紹介します。恩田のメッセージが、若いしなやかな感性によって確かに深く受けとめられたことが分かります。 ◯今回の講演は驚きが大きかったです。俳句の表現の深さや、知性と感性、想像力の重要さをよく知ることができました。特に『落葉踏んで人道念を全うす』の奥深さ、味わい深さは驚きでした。先生の講演で、俳句の最も面白いところを教えていただいたと思います。特に衝撃だったのは、俳句朗読パフォーマンスです。最初は静かに朗読するものと思っていたのですが、フランス語や、全身を使った表現に度肝を抜かれました。おそらくあの会場にいたほとんどの人がそうだったと思います。新しいものを感じ、非常に素敵でした。(1年・男) ◯自分が絶望的になっていても文学になんとか頼って生きる希望を得たということは、私にはわかることができない。死にたいと思ったことがないからである。でも、そのような状況の人間をも救い、私のように幸せな人間の生活をさらに豊かにしてくれる文学は本当に素晴らしく、人類にとって偉大なものであるということは、今更ながら知ることができた。 今回の講演でいちばん心に残ったのは「未知の地平を拓く」という言葉である。私は「読む」ことで、自分の世界を広げ、世の中を支えられる人材になってほしいと、恩田さんに託された気がした。時間がたつのは止められないけれど、今、自分にできること、やるべきことを怠らず、一生懸命に努めたい。そして、自分の世界のみならず、誰かの世界をも広げられるような人間になりたい。(1年・女) ◯私は、恩田さんがはじめに説明してくださった、「会へば兄弟ひぐらしの声林立す」という句が、1番印象に残っています。兄弟の部分をはらからと読む理由が、とても奥深くてびっくりしました。実際にひぐらしの声を、恩田さんは体感していたから、とても感動されたんだなと思いました。また、この句を読んで、私もひぐらしの声を肌で感じてみたいと思いました。恩田さんは、今の私には想像できないような高校生活を送っていたことにおどろきました。先が見えない生活をしていたからこそ、俳句のすばらしさに気づくことができたのではないかと思います。今、スマートフォンでのSNS、とくにLINEでの会話がどんどん増えてきていて、俳句のような、日本古来の日本語の美しさに触れる機会が大幅に減っています。私には、この講演会がすごく新鮮なものに感じました。これを良い機会に、俳句や古文などに興味を持ち、昔の日本に触れられたらいいなと思います。ありがとうございました。(1年・女) ◯ぼくが今回の講演会で印象に残ったものは三つあります。 一つ目は、恩田さんの豊かな経験の話です。ひぐらしの句も、鳴き声をたくさん聞いたことのある恩田さんだからこその解釈が面白かったです。 二つ目は、仏教の話です。依りどころを変えてこころを磨く転依という言葉が印象に残り、自分たちとも重なる話が多く、心に残りました。 三つ目は、俳句の朗読です。「三つ編みの髪の根つよし原爆忌」では、床に伏せて悲しみを表現していたのが心に残っています。「三千大千世界」を、仏教用語で「みちおほち」と読んだり、俳句をフランス語で読んだりしていたので、後から「言語によって体の動き方も変わる」という話を聞き、納得しました。俳句は日本語だけでなく、いろいろな楽しみ方もあるのかと思いました。 恩田さんの解釈に納得し、今までよりも俳句に興味がわきました。(1年・男) ◯講演会で一番印象に残ったことは特に2つあります。1つ目は自分の人生を支えてくれるような古典に出会い、耕し読解するということです。私は古典をただの教材としてしか読んだことがありません。しかし恩田さんの話から確かに古典の一つ一つには死者の魂が詰まっていて人生の岐路に立ったときに参考となるものが多く学ぶことができると思いました。私も本が好きなので視点を変えて挑戦してみたいです。2つ目は生身の人間と出会って刺激を受けるということです。今はどこにいてもスマホを持っていれば顔を見たことがない人とさえ会話ができますが、やはり直接会ったほうがより良い刺激を吸収し、自分を成長させてくれると思います。だから積極的に男女問わず様々な人と関わっていきたいです。そして恩田さんが俳句で日本と世界の架け橋になられたように将来誰かのため、何かのための架け橋になるような人間になりたいです。(2年・女) ◯「俳句には共同体に根付く季語が不可欠でいつも背後には自然が存在している。自然は近代的な自我を超えたものであり、作者は感情を季物に託し広やかなものに自我を解放する。今までのものの見方、感じ方の枠を破ることを氏は破行句と呼んでいる。読者は切れの余白の中で作者のいのちと出会う。」と言う考え方は今までであったことがなく、面白いと思った。また、耕し読解…現実社会を能動的に読むという読解方法…を実践して「クリエイティビティーの土台となり心身まるごとの価値観を新たに想像」していきたい。(2年・男) ◯今回、恩田侑布子さんの講演を聞いて、当たり前にあると思っているものを、当たり前と見ず、違う視点で見ることが大切だと思った。恩田さんは、俳句を作る時に身の回りのものを違った視点で見ることで素敵な一句を作り出している。また、配られた紙に載っていた恩田さんが高校1年生の時に書いた卬高新聞にも心が惹かれた。恩田さんの高校時代はまだ家庭科は女子だけというのが当たり前だったのに対して、それを当たり前と思わず、自分の意見をはっきり述べていて、読んでいてすごく共感できる内容だった。また、俳句朗読パフォーマンスでは、それぞれの俳句に合わせて読み方を変えていて表現の仕方によって同じ人が作った俳句でも雰囲気が全く違ってしまうので驚いた。特にフランス語で朗読した時は、日本語のおしとやかな感じと違い、かなり感情的にできることも知った。私は俳句を作ることはあまり得意ではないが、今回の講演で学んだことは普段の生活でも他のことにも当てはまることだと思うので、心に留めておきたい。楽しく有意義な講演だった。(2年・女) ◯先生が何度も仰っていた「耕し読解」という言葉が印象に残りました。仏教のこともあまり知らなかったので、考え方を教えていただけて、とてもよい機会でした。また、何より印象に残ったのは、オウム真理教の中川死刑囚の詠んだという俳句です。人としての感情を失わないまま死刑に処せられたのだと思うと、やりきれない気持ちになりました。 先生の半生を聞いて、子どもの頃の経験がそのまま詩作に生きているのだなと思いました。壮絶な子ども時代を経て、ここ静高にいる間も思い悩み、色々なものに触れた経験が人生を豊かにしているのだろうと思いました。 俳句パフォーマンスも初めて見たので、圧倒されました。貴重な経験になりました。(2年・女) ◯その少女のような声とは似合わない深い言葉は、私の心に深く深く響いた。きっといろいろな困難を乗り越えてきたからこそ心にひびくのだと思った。私も日常生活で使う言葉に影響力を持てるような人間になりたいと思ったし、そのために一日一日を大切に使っていきたいと思った。最後の俳句パフォーマンスも迫力がすごく、とても楽しい時間をすごすことができました(3年・女) ◯(前半略) 今まで「読む」ことについて特に何も考えていなかったけれども、もっと能動的に「読む」という行為をしていきたいと思った。ただ読んでインプットするだけでは確かにAIと何も変わらない。僕は人間なので人間らしく読んで考え発信していくことを意識していきたい。AI に負けないよう、機械にならないようにする。さすが俳人。話し方がきれいだった。「音」にこだわった話し方をしていると感じた。僕も心ひかれるものにはどっぷりとつかろうと思う。(3年・男) ◯仏教の話が一番心に残った。すべてのものは実体がない「空」である、苦悩は嘆くものではないのだ、とうことなどは、現代の生き方、考え方と大きく関わってくるものであると感じた。そして「読む」行為。それは必ずしも字などで示してあるものを対象とはしない。この世界について、様々な抱えている問題について、さらには宇宙の真理なんかも含まれるだろうか。どうしてそうなっているのか、なぜなのか、…。それを読み解いて行き、皆に共有し、よりよい生活を送れるようにする、「耕し読解」をしていくことが大切だという。(中略)今後の社会においては、特にこの「原始仏典」の方の考え方が、生きていくカギとなってきそうである(3年・男) ◯自らの経験から仏教なども絡めた「思想」「生き方」の話をしてくださった。「たがやし読解」という言葉にすごく感銘を受けた。文学に向き合う姿勢は理系の人間だとしてもないがしろにしてはいけないし、先人から多くのことを学びとっていくべきだと感じた。全体を通して、高校生を引きつけるための話し方をすごく意識されているなと感じた。高校生がかかえがちな悩みを共有してくださり、自分としても話に聞き入ってしまった。内容については、仏教観を人生の柱としながら、先生自身の教訓も赤裸々に語ってくださり、あまりそういった話をじっくりと聞くこともなく、宗教を遠いものと感じていた私には衝撃だった。 宗教の主体は神ではなく、そこに救いを求める人間なのだということを改めて感じた。最後の朗読パフォーマンスについても非常に鮮烈で、俳句というのは座っておごそかな気持ちで詠むものだという先入観を見事に打ち破るもので、非常に感動した。 海外で活動なさっているというのもあって、日本人の感覚にとらわれない広い視野や感覚と語り草にすごく刺戟を受けたし、自分も古典にもっと真剣に向き合って見識を広げていきたいと思った。(3年・男)
恩田侑布子の読売新聞夕刊「たしなみ」エッセー、次回は4月7日です。題して「かなしみとよろこびのマナー」。山本容子さんのステキな銅版画もどうぞお楽しみください。
5月10日 講演会盛会に、心よりお礼申し上げます。楽屋に押しかけてくれた静高生の熱意に感激しました!
第40回 静岡高校教育講演会 日時 2019年5月10日(金)13:30~15:30 会場 静岡市民文化会館 大ホール 講師 恩田侑布子 俳人・文芸評論家 演題 「あなたの橋を架けよう」 当日の講演要旨です ↑ クリックで拡大します 静岡の美しい自然の森と、本ということばの森。二つの森をさまよった高校時代 高校時代に出会ってライフワークとなった仏教から、若者たちへ、はなむけのことばを語ります 一階席の約千人の高校生、二階席の一般市民、ともに私語もなく聴き入りました 一句で飯田蛇笏を師と思ったという出会い 「耕し読解」は、本講演の大きな山場です 「耕し読解」は、あらゆるクリエイティビティーの土台になります 人間の真善美をAIに明け渡さないで・・・ 俳句朗読パフォーマンス ステージを縦横に・・・ ハイティーンの高校男子に「さらば少年」の句を捧げます 三つ編みの髪の根つよし原爆忌 分かち合ひしは冬霧の匂ひのみ ショパンの「雨だれ」(ピアノ:サンソン・フランソワ)にあわせて 日仏語両方で朗読 楽屋にて 静高生たちと話がはずみます 閉会後の楽屋に20人ほどの質問者が詰めかけ嬉しい悲鳴。質疑応答は1時間を超しても終わらず、とうとうロビーに座を移すことに。夕方5時過ぎまで、腹を割って話し合った5人とパチリ。 真剣で頼もしい若者たちよ、君たちの未来に栄光あれ! ※ 写真撮影は山本均様(静岡高校95期卒業)のご協力によるものです。記してお礼申し上げます。