5月の第一回目の句会は、「蝌蚪(かと)」と「柳」を兼題にしておこなわれました!^^ 蝌蚪とは、おたまじゃくしのことです。参加者のなかでも、蝌蚪という言葉をはじめて聞いたという方がいました(私もそうでした)。 初めて目にしたときは音読することさえ難しいような季語ですが、俳句をつうじてあたらしい言葉を知っていくのはとても楽しいです。 なお、兼題とは、句会に先立って知らされているテーマのことです。季語が選ばれることが多いですが、その他にも何らかの漢字一字や、ほかの言葉が指定されることもあります。 同じテーマに即して、参加者たちが作品を持ち寄るわけですね! なお、季語には「傍題」もあります。たとえば、「柳」という季語の傍題には、「青柳」「糸柳」「柳影」「柳の雨」「雨柳」などなど、柳にかんするたくさんの言葉が含まれています。「柳」が兼題であるといっても、句会の参加者はこれら多くの傍題を作句に使えます。 さらにあらき俳句会では、兼題として出された季語や言葉を使っていない作品を提出することももちろん可能です。兼題は、あくまで参加者が作品をつくりやすくなる一つのきっかけとして出されるにすぎません。今回の句会でも、「ライラック」「アマリリス」「花時雨」「清明」などの季語による作品がありました。そして、無季の句や破調の句、そして季重なり(二つ以上の季語を含む作品)も、あらき俳句会で分かち合うことが可能です。 今回特選にえらばれたのも、兼題以外の季語「蝮草(まむしぐさ)」を用いた作品でした。あらき俳句会における作品評価には、特選、入選、原石賞、などがあり、特選が最高の評価です。 それでは、今週の特選句と恩田代表による鑑賞を、ぜひお楽しみください! (大井佐久矢) 特選 土中にはあんぢゆうありや蝮草 山田とも恵 蝮草は晩春の季語。山裾の土のなかから這い出し、鎌首をもたげる蝮を思わせる異形の草、蝮蛇草に問いかける。死後土に帰ったとして、土の中には安住があるのですか? この世のどこにも安住はないのではないか。異形のものに問いかけずにはいられない。「あんぢゆう」というひらがな表記によって、土の湿っぽくなまあたたかい不気味さが感じられる。また「土の中」ではなく、ドチュウと音読みしたことで、感傷に沈まず、抒情が強靭になった。行く春の物狂おしさ、生きることの得体の知れなさを独自の文体で描いた作者は、二九歳。将来が楽しみな大型新人の登場である。 (選句 ・鑑賞 恩田侑布子)