12月2回目の句会が…と始まりたいところですが、今回は特別。いつもの句会はお休みし、代表・恩田侑布子の第四句集『夢洗ひ』の出版記念祝賀会を、ささやかながら句会参加者で開催しました。 当日は抜けるような冬青空の下、静岡市内の藁科川上流の手打ち蕎麦屋さんにて、季節の野菜をふんだんに使ったお料理に舌鼓を打ちました。 食事をしながら『夢洗ひ』のお気に入りの句を発表しあったり、参加者一人一人の句の傾向や変化など、普段の句会では話しきれない話題をじっくり話すことができました。 とはいえ、まじめな(?)樸俳句会。食事が終わると、前回の句会で提出した俳句のプリントが配布され、ペンとノートを取り出して出張俳句会が始まりました。兼題は「冬の月・湯冷め・綿虫」。時間の都合で今回は恩田の選句と講評のみでしたので、ここでは恩田が選んだ入選句と講評を掲載させていただきます。 出漁の航跡頒つ冬の月 杉山雅子 恩田:「頒つ」と「冬の月」の間に深い切れがある。画面構成が巧みであり、句のこころが通っている。出漁の航跡は左右に裂かれ開いていく。それを冬の月が皓々と照らしている。冬の自然の厳しさとともに、粛然とした、おごそかで気がひきしまるようなたたずまいがある。人の運命も感じさせる。 綿虫の指にとまりし一里塚 松井誠司 恩田:綿虫が止まった指を一里塚と詠んだところが面白い。孤独な静寂の中に決意が感じられる句である。 雨だれのイルミネーション落ちる嘘 山田とも恵 恩田:無季だが面白い。ぐっと焦点が豆電球に絞られ、美しくもないくたびれた都会のありふれたイルミネーションの赤や青の色に染まって、雨だれが落ちてゆくさまが浮かびあがる。現代の都会の虚飾、都会人の心象が描けた。うす汚れた風景が現実であることを突き付け、批判精神が詩になっている。 兼題の「湯冷め」は風呂から上がってからの時間経過と、寒さの両方の意味をすでに孕んでいるため、絶妙なセンスで使わないと“付き過ぎの句”になりやすいので難しかったという意見が出ました。使いづらい季語というのは作句力に負荷を与え力をつけてくれるので、「湯冷め」はまさに筋トレ季語ですね! 一年の最後にとても有意義な時間を過ごすことができました。来年もたくさん歩いて俳句を作りたいと思います。そして、このHPを通してより多くの方と俳句を楽しむことができれば幸いです。 2017年も樸俳句会をどうぞよろしくお願いいたします!(山田とも恵)