『俳壇 』二〇一九年一月号 三〇句 青女 恩田侑布子 「俳壇」2019年1月号に掲載された恩田侑布子の「青女」30句をここに転載させていただきます。 「俳壇」二〇一九年一月号 三〇句 青女 恩田侑布子 南面の榧の神木冬に入る 虫食ひの粉引徳利冬ぬくし たまゆらは永遠に似て日向ぼこ 日当れば岐れ路ある枯野かな よく枯れて小判の色になりゐたり 引くほどに空繰り出しぬ枯かづら 霜ふらば降れ一休の忌なりけり 手から手へ渡す小銭や冬ぬくし 鬼の歯は川原石なり里神楽 群峯は羅漢ならずや冬茜 琅玕の背戸や青女の来ます夜 のど笛のうすうすとあり近松忌 淡交をあの世この世に年暮るる 水音のほかは黙せり初景色 初凪は胸の高さや神の道 初富士を仰ぐ一生(ひとよ)の光源を 初風に鵬のはばたき聞かんとす 橙の鎮座にはちと小さき餅 山水を満たす湯舟や四方の春 宝船手ぶらで来いと云はれけり 牛蒡注連うねりくねつてどこへゆく つややかに吾も釣られたし初戎 跳ね返るもの福笹と呼びにけり 新玉のあたまのなかをやはらかく まばたきに混じる金粉三ヶ日 初閻魔肋骨に肉殖やしては 枯蘆にくすぐられゆく齢かな 母呼ばぬ永き歳月冬牡丹 寒晴にあり半月と半生と 絶壁の寒晴どんと来いと云ふ