あらき歳時記 秋の暮

photo by 侑布子

2024年11月3日 樸句会特選句

  投げ銭の帽子の歪み秋の暮

長倉尚世

 大道芸に投げ銭はつきもの。当たり前の光景を当たり前でなくしたのは、ひとえに「帽子の歪み」です。くたびれた庇帽が目に浮かびます。いびつになった帽子の形に芸人の渡世の日々が偲ばれます。足早に迫る秋のたそがれの中、残光を浴びる帽子の縁の歪みを切り出してきた鮮度。リアルな臨場感を残す俳句です。

(選・鑑賞 恩田侑布子)

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