photo by 侑布子
2024年11月3日 樸句会特選句
穭田の真中の墓やははの里
見原万智子
田舎では広い田んぼの真ん中に集落の墓があるのをよく見かけます。青田や稲田の中ではそうでもありませんが、秋の刈入れが済んだあとには目立つものです。「穭田」は薄い碧色のパサついた葉が伸び、刈った直後の田にはない、そこはかとなくさびしい明るさがあります。田んぼの中の墓に、母が眠っていようといまいと、ここはたしかに母のふるさとなのです。言外にこもるぬくもりに秋の澄んだ日差しがあり救われます。
(選・鑑賞 恩田侑布子)