
photo by 侑布子
2025年1月26日 樸句会特選句
寒声や師匠口ぐせ「間は魔なり」
岸裕之
師匠の声が座敷に響く寒中の稽古です。「間は魔なり」と、発止たる文語調に力があります。小唄の稽古ということですが、邦楽の音曲にとどまらず、日本文化は書道も能も歌舞伎も落語も「間」の文化です。俳句の「切れ」と余白も、その変奏といえましょう。この句の良さは、「寒声や」の切字で鋭く切れ、中七でそれが師匠の口ぐせであると、稽古の厳しさを想像させ、トドメとして「間は魔なり」と内実へ彫り込んだところです。師の鋭い肉声は、油断も隙もない時間と空間の「間」を剔抉し、寒気をいっそう引き締めます。心技一体の東洋の芸が立ち上がる見事さ。
(選・鑑賞 恩田侑布子)