photo by 侑布子
2021年3月7日 樸句会特選句
目刺焼くうからやからを遠ざかり
見原万智子
うからは親族、やからは族です。作者は、すべての血縁者やともがらから「遠ざかり」、いま、たった一人で目刺を焼いています。脂の乗った目刺のじゅわっと焦げるいい匂い。大海で生きてきたかわいい目刺を皿に載せ、ふと向き合います。そのアッツアツをほおばるとき、腸の苦味はわが腸にまでしみわたります。目刺が作者の孤独と一つになる瞬間です。さりながら句のリズムはさっぱりとして胃にもたれません。春昼の一人の醍醐味がここにあります。
(選 ・鑑賞 恩田侑布子)
(選 ・鑑賞 恩田侑布子)