2022年2月6日 樸句会特選句
首元の皺震はする追儺かな
芹沢雄太郎
鬼やらいの声を高く張っているのは父でしょうか。本人が無心に豆撒きするさなか、家族は、ハッとその首の皺の深さに胸を突かれました。「首元の皺震はする追儺」の間然するところのない表現はいきおいとなって、切字の「かな」を韻かせます。めっきり老けて弛んだ首の皺と、鬼やらいの声の気迫が、鮮明な像となって尾をひき、晩冬の闇に残響します。同時に豆を撒く真剣さにどこやらおかしみも添い、味わいを濃くしています。
(選 ・鑑賞 恩田侑布子)
(選 ・鑑賞 恩田侑布子)