3月17日 句会報告

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彼岸の入りの句会。兼題は「ものの芽」と「春の闇」です。
句会の行われるアイセルから徒歩5分の熊野神社の鳥居をくぐると「ものの芽」に包まれるような気がします。
高点句を紹介していきましょう。今回、恩田侑布子特選はありませんでした。

(今後、掲載句についての恩田侑布子の評価は以下の表記とします。)   ◎ 特選  〇 入選                   ○原 原石賞 △ 入選とシルシの中間  ゝ シルシ

高点句を紹介していきましょう。

○ 昼酒の蕎麦屋に長居柳の芽   伊藤重之

合評では、
「リタイアした老人の一日のひとコマ。こういう身分になりたいな」
「昼酒のまったりした気分が出ている。蕎麦屋の入り口に柳の木があるのだろう」
「漢字の表記が作者の気分を表していて良い」
「ワタシもこれから“昼酒”にしようかな」
などの感想、意見が出ました。
恩田は、
「のどかな春の雰囲気が出ており、季語が効いている。お客も少なくて、馴染みの店で遠慮なく吞んでいる。窓には柳がしな垂れかかっている情景」
と講評しました。
作者は、
「弥勒(安倍川に近い静岡市の地名)の「K」という店です。天麩羅をつまみに呑むことがあります」
と少し嬉しそうに語りました。

○ 春の闇来る人の来ぬ喫茶店   久保田利招

合評では、
「異性を待つ切ない心とマッチしている春の闇」
「生温かく濃密な春の闇の向うから現れるであろう恋人を待ち焦がれている。ここは夏でも秋でもなく“春の闇”でなければダメ」
「異性を待っているのではなく、いつもの喫茶店のそこに座っている人が来ない。どうしたのだろうという、心配の気持ちではないでしょうか」
「“待つ人の”だと散文的になるので、“来る人の”と推敲したのではないか」
などの感想、意見がありました。
恩田は、
「恋がひそんでいる。来るはずのを省略しているので含みがあり、気を揉んでいる感じが出た。“春の闇”に体性感覚がある。闇が震えている。デリケートな質感をもった闇。季語が効いている、いのちを持っている」
と講評しました。

△渡し場の水のふくらみ蘆の角   塚本敏正

「この情景は水彩画を見るようだ。蘆が新芽を出す、いささか古めかしい渡し場の光景」
との感想。
恩田からは、
「映像再現性がある。うまくまとめてあって絵葉書的なのがやや惜しまれるが、「ふくらみ」の措辞がいい手堅い句。これからさらに新味の獲得と着眼点の飛躍に挑戦されれば塚本さんは素晴らしくなる」
との講評と励ましの言葉がありました。

ゝものの芽にかこまれて妻退院す  山本正幸

「わかりやすく、いい句だ。愛する奥さんが無事退院した。ちょうど木々の芽が盛んに出てくる時節。奥さんを寿ぐ句」
「いかにも退院おめでとうという気持ちになる」
との感想が聞かれました。
恩田は、
「季語が効いている句。やわらかな空、やさしい作者の奥様を思う心が溢れ、一物仕立てで祝意を表している。“存問”の句としては良質だが、文芸としての奥行きや多層構造はない」
と講評しました。

ゝひそめたる息ほつと吐く春の闇  西垣 譲

「若い女性の気持ちを詠っている。異性と付き合って間がなく、何かを迫られるかなと期待したが何もなかった。残念なような、安心したような気持ちが出ている」
「何のことかよく分からなかった。深くはないが、緊張感のある句。春の闇だからそれほど深刻ではないのでしょう」
などの感想。
恩田は、
「“ひそめたる”が思わせぶり。感じは分かり、雰囲気もある。しかし、正体がつかめず、根のない句と言わざるを得ない」
と講評しました。
作者は、
「生温かく重苦しい春の闇を詠んでみた。Tさん(句座を囲む最年少の女性)調にしてみたのですが」
と述べました。

[後記]
樸俳句会代表の恩田侑布子は、句集『夢洗ひ』の成果により平成28年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しました。本日の句会の冒頭、句会の連衆から熱い祝福の拍手が送られました。ホワイトボードには大きくお祝いの言葉と花マルがいっぱい。「今回の句集が一番好きです」「日本語の美しさを堪能」との声もあがりました。連衆にとっても嬉しく励みになることです。
(恩田の受賞コメント及び、講座生からの祝詞は本HPの「お知らせ」をご覧ください。また文部科学省の芸術選奨のURLも掲載しました)
今回の句会で感じたのは、自分の感情をいかにして詩の言葉に結晶できるかということです。恩田は、“モノに託す”“潜める”“転じる”などにより、感情をストレートに出さないで句にしていくことを強調しました。「短歌ならそれ(ストレートな感情表現)ができる」とも。
次回句会の兼題は「古草」「春障子」です。

(山本正幸)

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