6月2日 句会報告と特選句

kinpoge

6月1回目の句会。兼題は「夏の日」と「更衣」です。
特選2句、入選2句、原石賞1句、シルシ10句。粒揃いの句が多かった前回と比べると今回は不調気味。
兼題にもよるのでしょうか。浮き沈みの激しい?樸俳句会です。
高点句を紹介していきましょう。

掲載句の恩田侑布子の評価は次の表記とします

◎ 特選  〇 入選 【原】 原石 △ 入選とシルシの中間  ゝ シルシ

◎風立ちて竹林にはか夏日影  松井誠司
◎先生の自転車疾し更衣  山本正幸
(下記、恩田侑布子の特選句鑑賞へ)

〇膝小僧抱きて見る君夜光虫  山田とも恵

合評では、
「幻想的な句。ロマンティシズムも感じられる。夜光虫の青白い光が“君”という人間のかたちになってくる」
「発想が面白い」
「膝小僧を抱くのが誰なのか分かりにくい」
などの感想、意見がありました。
恩田は、
「膝小僧を抱いて遠くから好きな人を見ている。海辺には大勢の仲間がいる。あの人が好きなのに傍に行けないもどかしさ。夜光虫のブルーの光が幻想的に渚を彩る」
と講評しました。

〇吹き抜けに大の字でいる夏日かな  久保田利昭

「こういう光景にあこがれる。誰もいないお寺かな」
という感想。
恩田は、
「天井の高い吹き抜けのフロアーに大の字で寝ころがる。高窓から午前の陽が射しており、まだ涼しい時間である。いまにもストレッチ体操でも始まりそうな健康的な感覚に溢れている」
と講評しました。

【原】立ちこぎて夏を頬ばる男子かな  萩倉 誠

合評では、
「自転車に乗って、頬ばった夏の風はどんな味がするのだろう?」
「風を受けて爽やかな感じが伝わってくる」
「“夏を頬ばる”の措辞で採った」
などの感想。
恩田は、
「“立ちこぎて”が耳慣れない。また“男子(だんし)”がそぐわないかな」
と講評し、次のように添削しました。

立ち漕ぎの夏を頬ばる男の子かな

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投句の合評と講評のあと、いつも恩田が現俳壇から注目の句集を紹介し鑑賞するコーナーがあります。
今回は5月29日の朝日新聞紙面の「俳句時評」で恩田侑布子が取り上げた上田玄氏の俳句(『月光口碑』より20句抄出)を読みました。
はじめに恩田から、作者を取材して知り得た来歴、時代背景などの紹介がありました。
連衆からは、
「挫折していった仲間たちを想って詠っていると思う」
「同世代として共感できる句がある」
「生きていくことへの決意を感じる。自分をスカラベに擬した句に共感」
「イメージが追いついていかない」
「いちいち辞書を引かないと理解がおぼつかない」
「戦争体験者としてはやや違和感がある」
「この世代の“戦争”とは“ベトナム戦争”を指すのではないか」
「謎めいている。謎解きを読者に強いる」
「深刻すぎないか? ナルシシズムを感じる」
「やはり万人に分かる俳句であるべきだろう」
「俳句というより“詩”に近いと思う。
『現代詩手帖』に出てきそう」
「この内容を読者に媒介する人、訳す人が必要」
など様々な感想や意見がありました。
恩田は、
「多行形式という表現技法は措いて、実に深い世界である。古典の素養も背景にある。こういう句を埋もれたままにしておいてはいけない、と思った。今、俳壇が軽く淡白になってゆく中で貴重だ」
と語りました。
一番票を集めた句は次の二句です。

人間辞めて
何になる
水切り石の
跳ねの旅

塩漬けの
魂魄を
荷に
驢馬の列

[後記]
 上田玄氏の俳句について、同じ時代の空気を吸ってきた筆者としては俄かには評価しがたい感じに襲われました。まさに、おのれの来歴と現在の在り方を問うものであるからです。どの句にも“祈り”(家族への、友人たちへの、時代への、そして・・)がこめられていると思います。
次回兼題は、「麦秋」と「鮎」です。 (山本正幸)

toku_sirohana

特選
風立ちて竹林にはか夏日影                       松井誠司

 夏日影は陰ではなく、夏の日のひかりをいう。純然たる叙景句は難しいが、技巧の跡をとどめない自然な句である。カタワカナカと6音のA音が主調をなす明るい調べも内容にマッチして心地よい。一陣の風に竹幹がしない、いっせいに大空に竹若葉がそよぎわたる。はつなつの光が放たれる里山の光景である。竹の琅玕、若竹のみずみずしさ、きらきらと透き通る日差しのなかに、読み手もいつしらず誘われてゆく。
 藤枝市在の白藤の瀧への吟行と、あとから聞く。地霊も味方してくれたのだと納得。

特選
先生の自転車疾し更衣                        山本正幸

 更衣の朝、通学路は一斉にまばゆいワイシャツの群れとなる。「おはよう」。背中からさあっと風のように追い越してゆくひと。あ、先生だ。作者の憧れの先生は女性だが、読み手が女性なら男の先生を想像するだろう。初夏の風を切ってゆく背中が鮮やかである。更衣の季語から朝の外景に飛躍し、はちきれんばかりの若さにあふれる。疾しと、中七を形容詞の終止形で切り、座五を季語で止めた句姿も美しい。一句そのものに涼しいスピード感がある。    
(選句・鑑賞 恩田侑布子)

toku_barasora

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