6月16日 句会報告と特選句

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6月2回目の句会が行われました。今回の兼題は「麦秋」「鮎」。
夏の季語なのに「麦の“秋”」これ如何に!?日本語の季節をあらわす言葉は実に面白いですね。

掲載句の恩田侑布子の評価は次の表記とします

◎ 特選  〇 入選 【原】 原石 △ 入選とシルシの中間  ゝ シルシ

◎日表に阿弥陀を拝す麦の秋  荒巻信子
(下記、恩田侑布子の特選句鑑賞へ)

〇麦の秋ことさら夜は香りけり  西垣 譲

「見た目でなく香りに着眼した所が良い」
「湿気ているような香りで季節感を表現している」
というような感想がでました。
恩田侑布子は
「麦秋は一年で一番美しい季節だと思っている。その夜の美しさがサラッと描けている一物仕立ての句」
と講評しました。

〇カーブを左突き当たる店囮鮎   藤田まゆみ

「なんとも不思議な句。理屈はいらない。囮鮎のお店へ向かうワクワク感が詠み込まれている」
という意見が出ました。
恩田侑布子は
「見たことのない個性的な句。運転手と助手席の人との会話の口語俳句。可笑しさがあるだけでなく、“カーブ”という言葉から川の流れに沿って蛇行した道を車が走っていることが分かる。沿道には緑の茂みがあり、季節感まで詠みこまれている」
と講評しました。

〇巨大なる仏陀の如し朴の花  塚本敏正

恩田侑布子は
「“巨大なる仏陀”と先に言うことで、作者の驚きが出ている。山を歩いているとき、谷を覗くと朴の花がその谷の王者のように咲き誇っているところに出会う。その姿を想像すると“巨大なる仏陀”は決してこけおどしでなく、朴の花の本意に届き、その気高さを捉えている。直喩はこれくらい大胆なほうが良い。誰もが思いつくようなものはだめ。直喩には発想の飛躍が必要」
と講評し、直喩を使った名句を紹介しました。

死を遠き祭のごとく蝉しぐれ       正木ゆう子
やませ来るいたちのやうにしなやかに   佐藤鬼房
雪の日暮れはいくたびも読む文のごとし  飯田龍太

〇駄犬どち鼻こすり合ふ春の土手  西垣 譲

「やさしい句。“駄犬”と“春の土手”が合っている。あまり美しくない犬でしょ」
という感想がでました。
恩田侑布子からは、
「散歩している人と犬同士が出くわし、はしゃぎあっている様子が分かる。“どち”の措辞がうまい。“駄犬らの”にするとダメ。作者も犬と同化していて、動物同士の温もりと春の土手の温もりが感じられる」
との講評がありました。

 今回の句会では点がばらけたこともあり、たくさんの句を鑑賞しあうことができました。が、それゆえ終了時間間際はかなり駆け足になってしまいました。それぞれ思い入れのある句を持ち寄るものですから、致し方ないですね。作者から句の製作過程を直接伺えるのも句会の楽しみの一つです。
 次回の兼題は「バナナ・虹」です。
(山田とも恵)

bakusyu

特選
日表に阿弥陀を拝す麦の秋                        荒巻信子

 日光のさす場所が日表。田舎の小さなお堂に安置された阿弥陀三尊像だろう。もしかしたら露座仏。磨崖仏かもしれない。阿弥陀様は西方浄土を向いておられるから、まさにはつなつの日は中天にあるのだろう。背後はよく熟れた刈り取り寸前の麦畑、さやさやとそよぐ風音も清らかである。阿弥陀様のまどやかなお顔、やさしく微笑む口元までも見えてくる。「拝す」という動詞一語が一句を引き締め、瞬間の感動を伝える。日表と麦秋という光に満ちた措辞が、この世の浄土を現出している。
(選句・鑑賞 恩田侑布子)

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