桂信子賞受賞記念の恩田侑布子さん講演会(上)


恩田侑布子講演会
「花と富士 日本の美と時間のパラドクス」
2018年4月8日(日) 於:文京シビックホール

                講演会のご案内はこちら

この講演会を聴講された川面忠男様からご寄稿いただきましたので、二回に分けて掲載させていただきます。写真も川面様のご提供です。川面様、講演会の詳細なレポートありがとうございます。厚くお礼申し上げます。

桂信子賞受賞記念の恩田侑布子さん講演会(上)

  黒田杏子主宰の「藍生俳句会」が主催

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                   正面が恩田氏、右奥が黒田氏
 結社「藍生(あおい)俳句会」(黒田杏子主宰)が4月8日午後、東京・文京区の文京シビックセンター3階会議室で俳人・恩田侑布子さんの講演会を催した。「花と富士 日本の美と時間のパラドクス」という演題でパワーポイントによる講演。そのプレリュードとして自作の俳句を朗読した。
 恩田さんは、受賞した桂信子賞の授賞式が今年1月末に兵庫県伊丹市の柿衞(かきもり)文庫で行われた後、記念講演を行った。その内容が好評だったことから桂信子賞の選考委員である黒田杏子さんが東京の藍生俳句会の定例会後に再現したものだが、私のように会員以外の一般参加者も入場無料で聴講できた。
 優れた女性の俳人を対象にした桂信子賞の受賞者として恩田侑布子さんを推した選考委員は黒田杏子さん、宇田喜代子さん、西村和子さんらだが、黒田さんは講演会の趣旨を説明した冒頭の挨拶で自分が一番強く推薦したと言った。
 恩田さんは静岡市の「樸(あらき)俳句会」の代表だが、黒田さんは俳人としての恩田さんを高く評価していると語った。そして講師謝礼は黒田さんの藍生俳句会の指導料を回したとざっくばらんに打ち明けた。つまりポケットマネーを出して恩田さんを講師に招いたわけで黒田さんの恩田さんに対する思い入れが伝わった。
 恩田さんは句集「夢洗ひ」で2016年度の芸術選奨文部科学大臣賞を受賞、また同じく「夢洗ひ」で2017年度の現代俳句協会賞を受賞している。
 恩田さんは文芸評論家でもあり、2013年の芸術評論「余白の祭」が第23回ドゥマゴ文学賞を受賞した。翌年1月パリ日本文化会館で記念講演し、12月に再渡仏し、リヨンやパリで「花の俳句 日本の美と時間のパラドクス」と題して講演した。この内容は柿衞文庫における受賞記念講演、藍生俳句会主催のものと同じであったようだ。
 藍生俳句会が主催した講演会の会場はかなり広かったが、満席で立って聴講した人が少なくなかった。私は午後3時の開始直前に会場に入った時、立ったままの聴講を覚悟したが、「一番前が一つ空いています」という案内の声を聞き、「よろしいですか」「どうぞ」と応答のうえ着席した。その結果、最前列で恩田さんの講演を聴講できたのは幸運だった。
 (2018・4・12 川面忠男)

  
    前奏の俳句朗読パフォーマンス

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 2018年花祭と銘打って俳人の恩田侑布子さんの講演会が4月8日に催されたが、恩田さんは前奏として自作の俳句を朗読した。身振り手振りよろしく暗唱したうえフランス語に訳した。これはフランス講演の再現であろう。
 恩田さんは第1句集「イワンの馬鹿」、第2句集「振り返る馬」、第3句集「空塵秘抄」、第4句集「夢洗ひ」を世に出しているが、冒頭に<ころがりし桃の中から東歌>を読みあげた(写真)。これは昨年11月の日本近代文学館における俳句朗読会の後、私が求めた「夢洗ひ」の表紙裏に恩田さんのサインをいただいた句。思い出しては句の世界を想像している。
 当日は桂信子賞受賞記念講演がメーンであったため四つの句集の朗読は省略されたが、朗読された8句は俳句をフランス語でも表現した。ショパンの「雨だれ」をCDで流す演出だ。昨年11月の朗読をレポートした後、恩田さんから「ショパンの8句は、みんな静岡弁フランス語でした」というメールをいただいたが、むろん冗談であろう。恩田さんは静岡育ち、静岡高校の卒業生だ。
 日仏語で朗読した最初の句は<春陰の金閣にある細柱>(夢洗ひ)。春陰という季語は花曇りのような雰囲気が本意だ。金閣寺は美の象徴だが、永遠ではない。戦後に焼かれた。室町幕府の足利義満の別荘が寺になったが、将軍の権力も永遠ではない。「細柱」は不安定な感じがあり、移ろいゆく世の暗喩になっているのではないか。2番目の<吊橋の真ん中で逢ふさくらの夜>(イワンの馬鹿)も吊り橋の揺れが桜の美の永遠ではないことを表している。
 <まどろみにけり薔薇園に鉄の椅子>(夢洗ひ)、<香水をしのびよる死の如くつけ>(同)に続く5番目が<夏野ゆく死者の一人を杖として>(振り返る馬)。その死者は山崎方代という歌人である。恩田さんは方代の<柚子の実がさんらんと地を打って落つただそれだけのことなのよ>という歌に慰められたと著書の「余白の祭」の中で述べている。
 6番目の<三つ編みの髪の根つよし原爆忌>(夢洗ひ)は反戦の句。7番目の<分かち合ひしは冬霧の匂ひのみ>(振り返る馬)は男女関係か。最後の<一生(ひとよ)これしだれざくらのそよぎかな>(夢洗ひ)が「花と富士 日本の美と時間のパラドクス」という演題の講演につながる。
 (2018・4・12 川面忠男)

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