2月17日 句会報告

撮影 侑布子・安倍川より
                 撮影 侑布子・安倍川より

2月2回目の句会が行われました。
今回の兼題は「寒晴」「春を待つ」。
静岡から望む富士山はすでにあたたかさを帯びているようで、春の訪れを感じました。

まずは今回の高得点句から。

春を待つテトラポットの隙間かな
            佐藤宣雄

恩田侑布子入選句。
「テトラポットとは危険なところに積まれていると聞いていたので、怖いイメージを持っていた。その隙間に春を感じた作者の着眼点が面白い」
「恋の予感を感じる。テトラポットの上に若い人が佇んでいるイメージ」
というような、砂浜などではなく“テトラポットの隙間”に着眼点を置いたところに面白さを感じた方が多かったようです。
恩田侑布子からは
「“テトラポット”という語呂は愛らしい。ただ、情景を思い浮かべると寒々しい。そこに意外性はある。が、下五の“隙間かな”が宙づりになってしまっている。無機物のなかにどんな有機物が隠れているのかがわかれば、さらに面白くなる」と講評しました。

 
 
初富士や絹麻木綿翻り
           藤田まゆみ

恩田侑布子入選句。
「正月の空の色が見えてくる」
「織物工場でも作者は見たのかな?富士山の雪の白さと、その前で翻る反物の色彩が鮮やかに見えるよう」という意見が出ました。
恩田侑布子は
「富士山の雪を絹・麻・木綿に見立てたのだと思った。天候によって同じ雪でも姿は変わる。その姿を布の種類で表現したことが良いと思った」と講評しました。

 
 
寒晴や婦唱夫随の土手歩き
            西垣 譲

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恩田侑布子入選句。
恩田侑布子は
「本来は“夫唱婦随”。夫と妻の位置が逆ですね。この季語が“秋晴”だったら甘くなりすぎてしまうが、“寒晴”としたところが良い。また、“土手歩き”というところも年配のご夫妻のぶっきらぼうさが出ていてこれまた面白い。」と講評しました。

寒晴れやダブルバーガーがぶり食い
            萩倉 誠

恩田侑布子入選句。
「母と娘がハンバーガーを食べている風景が思い浮かんだ。幸せな親子のちょっと特別なひと時を感じた」
「中七から下五への濁音の連打がとっても効いている」
という感想が出ました。
恩田侑布子は
「一見無内容で行儀が悪い。しかも現代仮名遣いでドライに書かれている。読み下すと、なんだか空しいような、嗚咽が潜んでいるような感じだ。ポールオースターの小説のような虚無の底知れなさをちょっと思った。一人でがぶり食いする視線の先にある冬の青空の虚無感。濁音が続き、ストリートミュージシャンの音楽のような個性的な句」と講評しました。

 
 今回の句会では難読漢字の句が多く、非常に興味深かったです。例えば「蕪穢(ぶあい)」や「蛾眉(がび)」「漫ろ(そぞろ)」などです。普段あまり目にしない言葉を知るのはとても勉強になります。が、難読漢字の力に引っ張られて句の世界観が狭くなってしまう、という意見もありました。
 気に入った言葉を使う際には、その言葉の力を最大限生かせる寝床を調えて句作したいと思いました。
 次回の兼題は「春の闇」「ものの芽」です。兼題の季語も春へと移りますよ!(山田とも恵)