7月1日 句会報告

平成30年7月1日 樸句会報【第52号】

20180701 句会報用
                                photo by 侑布子

例年より早い梅雨明け後の、七月第1回の句会です。
入選2句、原石賞3句、シルシ1句、・7句という結果でした。
兼題は「夏の燈」と「葛切または葛桜」です。
入選句と原石句から1句を紹介します。

(◎ 特選 〇 入選 【原】原石 △ 入選とシルシの中間
ゝシルシ ・ シルシと無印の中間)

                            

〇夏ともし母が箪笥を閉める音
            芹沢雄太郎

合評では、
「涼しさと静けさのなかの音と。静かで寂しい感じでもあり、静かで平穏な幸せを感じでもある」
「涼しい感じ、夏痩せした母だろうか、ちょっとさみしげな句」
「老いた母の立てる音、さみしい感じが表されている」
というような老いた母をイメージさせるという評がある一方、
「あまり寂しい感じはしない。リズム感のある句で日常のいろいろな場面が想像できる」
との感想もありました。
恩田侑布子は、
「老いた母とは思いませんでした。子どものころ、夏蒲団の上でうとうとしていると、几帳面な母がたたんだ衣服を箪笥にしまう音がするといった光景でしょう。夏灯の持っている庶民的な生活のふくよかさと同時に昭和の簡素な暮らしの匂いも感じる。読み下すと響きも良い。夏灯に涼しい透明感があります。箪笥を閉める静かな音に一句が収斂していくところがいい。つつましくも清潔なくらし。ほのぼのとした句ですね」
と講評しました。
                       

〇岬まで歩いてみよか夏灯
             天野智美

合評では、
「“夏灯”と上五・中七が合っている、風を感じられる句」
「涼風!が吹いている」との感想がありました。
恩田侑布子は、
「小さな岬に行く道の途中に夏灯がポツンポツンとある情景が浮かび、涼しさが伝わってくる。西伊豆に多い30分で行って戻れるような岬でしょうか?単純化された良さがあり、また軽快な口語がシンプルな内容とあっている。夏灯の季語が生き生きと感じられる愛すべき句」
と講評しました。
              

【原】梅雨の月太り肉な背白濁湯
            藤田まゆみ

恩田侑布子は、
「よくある温泉俳句だが、平凡を免れている。五・七・五がすべて名詞で、そこから今にも降り出しそうなふくらんだ月、白濁した露天の湯、脂ののった女体、という存在感が迫る厚みのある描写である。中七の“な”が口語っぽいのが問題。“太り肉な背”→“せな太り肉(じし)”にしましょう。
〈 梅雨の月せな太り肉白濁湯 〉となり、これなら文句なく◯入選句でした」
と講評しました。
                       

投句の合評と講評のあと、本年2月10日90歳で逝去された石牟礼道子の句集『天』の俳句を鑑賞しました。

当日のレジュメです。クリックすると拡大します。
           ↓

20180701 注目の句集石牟礼道子

 椿落ちて狂女が作る泥仏
 
 わが酔えば花のようなる雪月夜

 常世なる海のたいらの石一つ
 
などが連衆の共感を呼びました。

「子規以降、近代以降の俳句とは違うところから書かれている。“写生”という姿勢から出発していない俳句。専門俳人の高度な技術とは違う次元、別の土俵から立ち上がっている句である。子規の写生がすべてではない。“俳句という文芸の広さゆたかさ”を意識していたい」
と恩田が話しました。
                          

〔後記〕
俳句初心者には、鑑賞、合評でかわされる感想がとても興味深いです。入選句の母の年齢をどうイメージするかのそれぞれのとらえ方の違いを楽しみました。
次回兼題は「山開き」「夏越」です。     (猪狩みき)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です