11月4日 句会報告

平成30年11月4日 樸句会報【第59号】

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 静岡の雲南省といわれる丸子の網代壁    photo by 侑布子

11月第1回。「大道芸ワールドカップin静岡」の喧噪を抜けると、句会場のアイセルに着きます。
兼題は「芋」「鹿」「猫」です。
入選◯1句、△6句、シルシ8句という結果でした。入選句を紹介します。
なお、10月19日の句会報は、特選、入選ともになかったためお休みしました。
                   

〇卓袱台の主役は芋茎雨の夜
             松井誠司

恩田侑布子だけが採りました。
「芋茎、なんというレトロな食べ物。今日のメイン料理というわけではなさそうです。肴にして夜更けにひとりちびちび飲んでいる。外はしめやかな雨。静かなさびしさが句の底から湧きあがってきます。形容詞がなくても伝わってくるわびしい孤独感があります。座五の“雨の夜”がいいですね。
でも作者の自解によると、信州で育った幼いころの体験だったのですね。戦後間もない頃で、晩秋になると農家に米はあっても、彩りのあるおかずは買えなかったと。この句のいうに言えない冬隣の雨に包まれる気配は、農耕民族のわたしたちが二千年間聞いてきた雨音だと思います。DNAに深く染み込んだものを呼び醒ます俳句といったらいいでしょうか」
と講評しました。

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                      photo by 侑布子

本日投句された中の一句を例に、俳句における「直喩」について恩田から解説がありました。

    大道芸ワールドカップin静岡
 秋の日の幾何学のごとジャグリング 

恩田は、「発想はいいが、“のごと”がもんだい。直喩にするなら思い切って斬新な比喩にしたい。“のごと”は取って“幾何学”で切り、替わりに“◯◯の”と作者の発見を入れたいです」と評しました。

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去る10月21日に静岡市駿河区丸子で開催された「恩田侑布子俳句朗読&講演会」(詩人大使クローデルの『百扇帖』から)には連衆の何人かが参加し、欠席投句者からも挨拶句が寄せられました。

そのなかでも石原あゆみさんの俳句と自註は、恩田をして「誰のこと?穴があったら入りたい」と大いに照れさせました。

 バレリーナ指先に呼ぶ秋の虹     

朗読パフォーマンスの鈴の音で世界が変わりました。
また木々の借景も加わり、一人のバレリーナを見るようでした。
一つ一つの言葉と一つ一つの動きが相まって、更に世界が変わっていき吸い込まれていきました。指のさきから秋の虹が句とともに伸びているのです。(石原あゆみ)

                              
講演会の句は、ほかに二句あり、思い出に浸りつつひとしきり話題になりました。

「恩田侑布子俳句朗読&講演会」についてはこちら
 

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 クローデルの肖像:「生誕150年記念 詩人大使ポール・クローデルと日本」展 (神奈川近代文学館)ポスターより 

[後記]
丸子待月楼の講演では、詩人ポール・クローデルの像がくっきりと立ちあがり、その短唱の「気息」まで伝わってきました。
恩田は「『百扇帖』にはありとあらゆるものがある。ないものといえば、ボードレールがその批評『笑いの本質について』のなかで述べた、グロテスクな笑い、絶対的滑稽といったものだけかもしれない」と、この二人のフランス詩人の資質の違いを端的に述べました。
また、俳句朗読パフォーマンスにおいては、恩田の句はすべからく声に出して読むべし、その音楽性を味わうべし、との意を強くした筆者です。

延期となりましたパリ日本文化会館でのシンポジウムの日程も決まり次第お知らせいたします。どうぞご高覧ください。
次回兼題は、「枯葉」と「鍋」です。(山本正幸)

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