あらき歳時記 霜夜

霜の夜
           

photo by 侑布子

 
 

2021年1月27日 樸句会特選句

 


 レコードのざらつき微か霜の夜
                   萩倉  誠

 レコードの人気が再来しています。大きな紙のジャケットの薄紙のなかから取り出し、埃のないのを確認しておもむろに針を乗せます。やわらかで芳純な演奏が始まります。ときおり交じる雑音。針の飛び。それらをひっくるめた「レコードのざらつき微か」が、失われた、しかしかつて確かにあった時間を蘇らせます。音色のもつやわらかな空気感が霜の夜のしじまに韻きます。芸術を愛する繊細な感性の匂いたつ俳句です。
            (選 ・鑑賞   恩田侑布子)

 

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