あらき歳時記 淑気

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photo by 侑布子

 

2021年1月10日 樸句会特選句

 


 ししむらを水の貫く淑気かな
                   古田秀

 人間の体は七〇パーセント前後が水からできているといいます。作者は元日、ふだんは叶わない朝風呂にゆっくりと入ったのでしょう。そのとき、白いひかりの淑気のなかで自身を「若水のかたまりだ」と思ったのではありませんか。中七の措辞「水の貫く」が秀抜です。体内をはしる水は、山河をはしる水流とかさなって句柄を大きくしています。新年で「貫く」といえば虚子の「去年今年貫く棒の如きもの」が浮かびますが、この句には三十歳の有無を言わせぬ若さがあります。水から生まれたはち切れる命のいきおい。その切れ味のするどさは古田秀という俳人の呱々の声です。

                (選 ・鑑賞   恩田侑布子)

  
 

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