あらき歳時記 薫風

腕白が
            

photo by 侑布子

 

2021年5月9日 樸句会特選句

 


  腕白が薫風となる滑り台   
                       前島裕子  

  二歳くらいの腕白っ子がおすべりの上からいま一人で滑り降りてきます。ちょっと恥ずかしそうな得意そうな笑顔。つい昨日まではうしろから両脇を抱いてやっと降りてきたのに。初めて自分で上がり、自分ですべって来ます。二回目ときたらもう颯爽と。「おお、やったね」と下から見守り見上げた瞬間、子どもが若葉を揺らして吹き渡る風の精になっていることにハッとしたのです。この子こそ薫風なんだわ。世代交代の歓喜の声です。幼児との神話的一日を活写した俳句。
                  (選 ・鑑賞   恩田侑布子)

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