あらき歳時記 南天の花

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photo by 侑布子

 

2023年6月18日 樸句会特選句


 花南天兄にないしょの素甘かな
                    島田淳

 「素甘」は蒸した上新粉にほんのりと砂糖を混ぜて餅状にした和菓子。上菓子にはない庶民のやさしさがある。それを、まだ帰らない兄さんには内緒で、自分一人でこっそりみんな食べてしまう。少し大袈裟にいえば、禁断の味ほど美味なものはない。口に広がるほの甘さと、一抹の後ろめたさが、梅雨時の南天の花と見事に響き合う。家々の鬼門にあって慎ましく地味な南天の花は、ふだん着の花だ。ふだんのこころを映し出す花なのである。
                        (選 ・鑑賞   恩田侑布子)

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